地域猫活動へご協力をお考え戴きたくて

2023年2月22日

地域猫という言葉がいつ生まれたのかは、知らない。いまも野良猫という言葉は、子どもでも知るものだが、地域猫となると、地域がその猫たちの存在を理解している、という条件が付く。猫が庭先で迷惑をかけるというようなことが懸念され、猫を嫌う方々もいるためである。地域の皆さまの寛大さに感謝したい。
 
公園などに、猫たちの安全な住まいを設ける。餌や水を、朝晩提供し、怪我や病気の猫を医院に連れて行く。保護が必要であれば、ボランティアさんの家にしばし匿うこともある。飼い主を探す呼びかけや催しを実施し、アピールも欠かさない。
 
ただ、公園に住まわせているだけでは、子猫が産まれることになり、無際限に増えかねない。そこで、TNR活動(捕獲し手術し返す意味の言葉の頭文字)といい、不妊手術をさせる。その費用もまた、募金などにより賄うことになるが、一部自治体が援助する場合もある。手術をした証拠として、耳にV字の切れ込みを入れるルールができている。その形に見立てて「さくら猫」という呼び方をすることが知られるようになってきた。右耳カットがオス猫、左耳がメス猫である。
 
ボランティアさんは、誰のためにするのでもない。ただ、そこに生きる猫たちのために、時間と労力、そして費用を提供している。その世話の日常は、雪の日も嵐の日も欠かすことなく営まれる。
 
日々練り歩いて餌を与えたり、住まいの環境を調えたりすることは、私は事実上できないものだから、わずかではあるが、費用の面で援助をするようになった。まずは餌を毎月少しだが送っており、病院など自由に用いられるような募金も、少しではあるが協力させてもらっている。公園で出会う度にボランティアさんたちには御礼を言われるが、とんでもない、こちらが頭を下げっぱなしである。
 
冬季には、カイロを住まいに置く。24時間温かさが保たれるものに限られるが、20時間と記されているもので、一日もつそうだ。それなら、廉価で手に入るので、1日分にも満たないほどだが、時折お渡ししている。ボランティアさんたちは、住まいの中に毛布のようなものをセットし、そこにカイロを入れるポケットをこしらえている。そのセットと清掃をする係もいる。そもそも、その住まいそのものが、断熱材を用いて手作りで用意したものなのだ。準備の労力だけでも、計り知れないものがある。
 
公園には誰でも入ることができる。時折、虐待をする人もいる。スプレーをかけるというのも許しがたいが、猫を傷つける者がいるのも事実で、殺された猫がいることも私は知っている。もちろん、いまはそれは犯罪と定められているため、地元警察のパトロールもお願いする形となっているが、親しかった猫がそのような目に遭ったという知らせを受けると、やるせない気持ちになり、悲しみに暮れることとなる。
 
この冬の時季は、地域猫たちにとっては厳しいものがある。寒さを凌いだとしても、風邪をひく子が出てくる。2月22日は猫の日。222の並びについての洒落であり、1987年に制定されたという。元来成猫は鳴かないものなのだが、子猫になったような気分で、甘えたいときには成猫も鳴く。猫にも個性があり、鳴き方がいろいろ違う。高い声やダミ声、にゃーと長く鳴く子と、にゃと短く言う子もいる。それぞれ、コミュニケーションを図っているわけで、いわば「猫と話をする」時が愉しい。
 
猫たちは、物音には敏感で、ガサッと音がすると、身構えたり逃げる態勢をつくったりする。そこは野性だ。だがまた、安心できる人間はちゃんと分かる。できれば甘えたいのだ。優しく撫でられたいのだ。最初は近寄らなかった子も、ほかの猫に優しくしている様子を見て、次第に馴染んでくるということもある。信頼されると、座った私の膝の上にのってきて、寝ようとさえする。
 
地域猫には、一人ひとり名前が付けられていることがある。猫たちも、いつもそう呼ばれるために、自分の名前を心得ている。振り向くし、藪から出てくる。そして軽快に駆けてくるようにもなると、完全にひとを認識しているのだということが分かる。それぞれに個性があり、人格ならぬ猫格がある、というふうに捉えるよりほかにはない。
 
見守ってくださる、ということだけでも、ボランティアさんたちからすれば、うれしいことなのだそうだ。最初はそのように言われた。だが、実際募金だけで活動がなされている。満たされなければ、すべてボランティアさんたちの手出しである。猫の日、ネコグッズもいいけれど、商業グッズだけに投資するのではなくて、その何分の一かを、すぐ傍で生きている命のために、援助の手を差し伸べてくださることはできないでしょうか。



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