ラジオの復権

2021年4月23日

私はラジオが好きだ。昔、そういう世代だったというのもあるが、別のことをしながらも耳に音楽なり情報なりが入ってくるのが心地よい。自分の望む曲をアレクサにかけさせるのもいいが、それだと自分の思った通りの世界が繰り広げられるだけだ。意外なもの、知らない情報が届くわけではないのが、つまらないと思うことが多いのである。
 
しかしラジオは元来、その時刻に聞かなければ、聞くことができなかった。無理して夜中に起きていたり、別の仕事を繰り替えてその時刻を空けたりもする必要があった。昔なら、予約録音もあったが、いまの時代なら、パソコンでネットから録音ということもよくやっていた。とくに語学系と、教養系、また放送大学などは、これが役立った。
 
radikoは、メジャーなラジオ聴取サイトである。ここが「タイムフリー」を始めて、少し様相が変わった。もはや、放送日時に関係なく、自分の聞きたいときにその番組を聞くことができるようになった。これで、好きなパーソナリティの番組を、聞きやすい時に聞くことができるようになった。NHKのらじる・らじるも「聞き逃し配信」を、より簡単にできるようにしてくれて、利用しやすくなった。どちらも放送から一週間、ネットから聞くことができる。radikoは一定の時間制限があるが、らじる・らじるのほうは何度でもいけるようだ。これだと、語学ものでも、よほど後から聞き直すという方法をとらない限り、「聞き逃し配信」で学習できることになる。今期から、「中高生の基礎英語 in English」が始まり、楽しんでいるが、この分だと録音する必要もないようにすら思う。これは、NHKの側としては、CDやダウンロードでの利益が確実に減るのではないだろうか。
 
これは私の漠然とした感想ではあるが、もしかすると、いまラジオの復権が起こっているのではないだろうか。車を運転するときにかかっている、というくらいの印象しかなかったかもしれない若い世代が、ちょっと探してみれば、気軽に入手できるトークなり情報なりに出会えることに気づき始めているのではないか、と感じるのだ。
 
たとえばこのコロナ禍で、在宅ワークのときに、ラジオをかけながらできる仕事というのもあるかもしれない。パソコンを使ってすることが多いとすれば、ラジオを聞くのは至って簡単だ。しかも、電波からラジオ機器を通して聞くよりも、音質は遙かに良い。FMもAMも同じようにクリアだ。
 
スピッツは2020年、「ラジオデイズ」という印象的な歌を発表した。
 
 どんな夢も近づけるように 道照らしてくれたよラジオ
 危なそうなワクワクも 放り投げてくれるラジオ
 
 こんな雑草も花を咲かす 教えてくれたんだラジオ
 したたかに胸熱く 空気揺らしてくれるラジオ
 
そもそもラジオに関しては思い入れの深いスピッツであるが、こんなセンスに共感できるのは、同じ福岡の人間だから、というわけでもないだろう。先日トーク番組で、そのかっこよいステージとは裏腹に生真面目な姿をラジオで聞かせてくれた、「神はサイコロを振らない」も福岡の大学からスタートした。福岡の音楽は熱い。あの井上陽水を、よくぞ大学は不合格にしてくれた、などと言うと、ひどく失礼にあたるだろうか。



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