若い人にお薦めの本・塩谷直也さんの本

2020年1月23日

大学生に聖書や教会について、お薦めの本はありませんか。少し前に若い神学生に尋ねられました。キリスト教に興味をもっているから、本を読んで知りたい、ということのようです。本は、その人により、またその関心の持ち方により、薦めるものが当然変わってきます。一般的に、と言われても難しいものですが、本を読みたい若者というイメージから、さしあたり上馬キリスト教会の本は、若い世代でも抵抗なく読めるのではないかと答えました。ちょっとチャラいような印象もありますが、書かれてある内容そのものは変なものではないからです。しかしまた、もう少し正座でもして向き合っていきたいという学生の場合には、また違う入口を紹介してもよい、とは思っていました。
 
その後、いろいろ本を見ているうちに、私はある人の文章と出会いました。塩谷直也さんです。短い文章を見て「これは」と感じ、何冊か著書を取り寄せてみました。驚きました。私の心にビンビン響いてきます。しかも、私の立ったことのないところに立って景色を見ているという感覚と、これは私の見ている景色だという感覚とが同居しているのです。私の筆力では表現できないような言葉が次々と零れてきます。参りました。
 
牧師経験もあるのと共に、教育者でもあります。学生にどのように語るべきかを心得ているとも言えます。そして、その生い立ちや経験が語られるとき、挫折や失敗を包み隠さず話しているのも好感が持てるのですが、その謙虚な眼差しの真実さは、私が大切にする点そのものでした。きっとこれなら、真摯に何かを求める若者たちには適切な案内書となるに違いない、と思いました。内容はソフトでありながら、実に鋭く、また福音の核心を突いていると思います。長年信仰生活をしている信徒もまた、教えられることが多々あるに違いありません。いえ長年信仰しているからこそ、いつの間にか忘れていることがあるでしょうし、あるいはまた、これまで実は福音がちっとも分かっていなかった、ということに気づかされるかもしれません。
 
塩谷直也さんの生い立ちからくるものを、ひとの思いと聖書の神の思いとを対照させて捉えたい場合には、『視点を変えて見てみれば』。これは19歳からのキリスト教というサブタイトルがついています。もちろんその年齢に限定する必要はありません。「死んでも逃げるな」というありがちな常識に対して、聖書は「逃げてでも生きろ」と言っているんだぞ、とのメッセージは鮮烈でした。「逃げてもそこに神がいる」からです。神は決して「見捨てない」のです。この本は私たちに、生き方を教えてくれる、と言っても過言ではありません。
 
『なんか気分が晴れる言葉をください』は、詩的に読める短いフレーズと美しい写真でイメージ的に味わえる本。サブタイトルは「聖書が教えてくれる50の生きる知恵(リアリズム)」。Q&A形式で、実際に学生たちから出された質問に、全くお説教臭くない答えが短く出されます。その視点の多様さと鋭さは逸品です。人生相談めいたものを求める場合にはこれがとてもよいと思います。
 
『聖書・信仰生活の手引き』はより一層聖書そのものを知るという観点に立っており、おそらく信徒向けとも言えるものなのでしょうが、初めて、聖書とは何か、を訪ねる場合にもほぼ問題ないくらいに、普通の人の心にぐいぐいと迫るものがあります。最初この本を見たときには、ありがちな聖書の解説本かと思っていましたが、改めて開くと驚かされました。聖書を解説しているようで、読者の胸に迫り神が問いかけ割り入る、従来の「聖書」の解説とは全く違うのです。聖書について知りたい学生はこれが一番よいと思います。
 
実は新しい本の中にも、もっと「面白い」ものがあります。書店で手にいる機会があったら、開いてみるとよいと思います。一般の書店にもキリスト教の棚があればけっこう置かれています。猫の写真集のようなものも、なかなかいいと思うのですが、さすがに全部購入というわけにはゆかないので、どうぞ皆さまがお確かめくださいませ。



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