YMCA記念日と在日韓国YMCA

2019年10月11日

YMCA(キリスト者青年会)記念日は、創始者の一人ジョージ・ウィリアムズの誕生日・10月11日に定められています。何かしら記念日があるべきということなのでしょう。
 
すでに幾度もこの日のこと、またYMCAのことについては言及してきました。私を育んでくれたひとつの組織でもありますし、教派に制限されず、キリスト教を信仰する人々の素直な働きの場として、用いられていることをうれしく思います。
 
『福音と世界』2019年10月号の特集は、日韓関係を背景にしてか、朝鮮半島と日本のあり方についてのやや難しい内容も多かったのですが、中にはこのYMCAの話題もありました。それは、「2・8独立宣言」の百周年に関する記事でした。
 
100年前1919年、歴史では朝鮮半島において3・1独立運動を記憶している方も多いでしょうが、その直接のきっかけになったのが、2・8独立宣言でした。在日朝鮮人留学生たちが発表したこの宣言は、当時朝鮮人が東京で唯一所有することのできた建築物としての在日本韓国YMCAの会館で発表されたのでした。
 
当時YMCAは、東京留学生たちがいつも集まって泣き笑いし、相談の場であったといいます。朝鮮人留学生にとり、あらゆる生活の中心がこのYMCAであったのだ、と。この独立宣言は、3・1の運動に終わらず、その精神を継承しながら、関東大震災で会館を焼失したときもあらたな会館を、日本のYMCAからの援助なしで建設したそうです。震災後の朝鮮人の虐殺という事情がそこに潜んでいると思われます。太平洋戦争へと続く世相の中でYMCAは活動を縮小せざるをえなくなり、戦後は日本YMCA同盟に加盟。本国での対立激化の動きのためだといいます。その後1965年に日韓国交が回復してからは、大阪にも拠点を設置するなど、発展するようになりました。いまなお運動や集会の場として用いられていますが、かつて独立宣言を発表したときの若者に連なる場であろうとしているそうです。
 
いま在日韓国YMCAの館内には、二・八独立宣言紀年資料室」が設置されています。日本の側は、「歴史と向き合ってこなかった。学んでこなかった。伝える努力を怠ってきた」と筆者は言います。そこに「倫理的知性」が欠落している、とまで指摘します。「じぶんがどこに立っているのか、みずからの立つ地層がどのようにつくられてきたかを知っているのだろうか」という問いと共に、この特集記事はひとまず終わります。しかし、挑戦独立や世界平和など高い理想を掲げるこの独立宣言は、いまも完成しないままである、との認識を筆者は示しています。



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