SNSと伝道

2019年8月24日

めったに買わないが、時折特集を見て買ってもいいかな、と思う『信徒の友』。日本キリスト教団関係の信徒用月刊誌ですが、今回9月号の特集が「SNSと伝道」。なかなかこういう話題を正面切って取り上げづらい雑誌なのかと思っていましたが、時代がそれを要求したのかもしれません。私は『Ministry』でさんざん啓蒙を受けて(?)きたので別段目新しい気持ちで迎えたわけではないし、パウロが現代いたら文句なしに飛びついただろうと確信しているくらいなのですが、関心をもって手に入れ読むことにしました。
 
ほぼ予想した範囲の記事ではありました。いつもの『信徒の友』の読者層を想像するに、高齢者のイメージがありますから、いまの時代故になんとかスマホはもっているかもしれませんが、大きな文字のやさしいスマホという程度かもしれず、とてもSNSのアカウントを利用しているとは思えないような方々が多いのではないかと思われます。いやいや、家族との連絡にLINEは使っているよ、とか、インスタ始めました、とかいう人もいらっしゃることでしょうが、記事のほうも、とにかく何も知らないというレベルの人に呼びかけ、説明するという姿勢をとっていたのだと思います。
 
そもそもSNSとは何か。これを、ソーシャル・ネットワーキング・サービスあたりから始めることもせず、とにかく4つの代表的なものを具体的に示して何ができるか、メリットは何か、などというところも説明します。が、特徴的なのは、いきなり Twitter の登録の仕方を丁寧に示すことでした。4つ全部を網羅することは頁数からもキャパからも難しいと見て、最も手軽に教会が始められるのではないかという判断からか、Twitterだけを取り上げるというのは、良い方法だったかと思われます。特集のサブタイトルが「福音つぶやいていますか」であったのもそれを示しています。もちろん、実際に使っている人が見れば分かり切ったことで、使っていない人から見れば何のことか実感がないという、ありがちな結果をもたらすかもしれませんが、その橋渡しをしようという考えからすれば、まずまずの方向性を出しているのではないかと思います。
 
とにかくまず始めてみませんか、という呼びかけの特集でした。いまどきしていない教会があるのかしら、と思うのは、使っている側の論理。まずはその世界に飛び込んでみなければ何も始まらないわけで、蚊帳の外にいる教会がやはり大多数というところなのでしょう。そもそもこうしたことに馴染んでいる世代の人が全くいないという教会もありましょうし、わずかにいてもお年寄り役員が、危険性の噂ばかり知っていて、許可しないというケースもあろうかと想像されますから。
 
いくつかの教会で実際にやっている具体例は、なかなか面白かったのですが、どれも教会教会していて、さて、いざ始めたもののその次にどうしていくか、というところまでは踏み込めていないような気がします。この数頁の企画では、やむをえないところでしょう。また、上馬キリスト教会について触れることはひとつもなかったのが気になります。おそらく意図的にそこには触れないように企画編集されたものと思われますが、ここがこの特集の限界だったのでしょう。先に開ける道のための開拓者を故意に無視するというのは、そのおふざけを一切認めず、模範としない意志の宣言と言えるからです。いまの将棋界を語る者が、藤井聡太くんなんか棋士じゃない、と一切触れないような態度で、さて、将棋を広めることができるのかどうか。結局SNSなどという新しいものに飛びついたところで、狭い教会仲間での仲良しクラブをつくりましょうという程度で、特集のタイトルにあるような「伝道」は真摯に、また深刻に考えてはいないのではないか、と勘ぐられるほどです。上馬がお手本だ、とする必要はないのですが、それに触れずして、教会のSNSを語ることはいまは不可能だろうという前提でのお話でした。



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