ソドムとゴモラ

2018年7月22日

今回は聖書を読むにはあまり役立たない知識であることを最初にお断りしておきます。
 
ソドムとゴモラとペアで登場する有名な町。カナンの地に拡がる豊かな土地にあり栄えた町でありましたが、結局死海に沈んだと言われています。それは、神のさばきにより滅亡したとされています。旧約聖書に登場する町はかなり考古学的に発掘がなされているものですが、これらについては今のところ手がかりがないと言われています。近くに「ソドムの山」と呼ばれる岩塩の箇所があり、名を留めています。
 
このソドムという語は、英語で後に「ソドミー」として残りました。ソドムの罪を指すものとして扱われ、カトリック教会のラテン語に、そして英語へと伝わりました。ロトを狙うソドムの男たちは、「知る」という言葉で性的交渉を求めたわけですから、いわゆる男色のように思われていますが、必ずしも男性どうしだけとは限らず、不自然な性的交渉について様々に扱われました。そういうことも、昔は教会の指示に基づくものとされたのです。なにせ、そうしないと天国に行けませんと言われていたものですから。
 
しかし近年、LGBTをはじめとした立場の人々をどう捉えていくかについて、キリスト教界でも大きな変化が起こっています。かつては、聖書に書いてあるからと言って、同性愛は罪だと決めていました。書いてあるのは間違いないのであって、これを昔のことだから、と安易に否定することもできないほどに、たくさん書かれてあるのが実情です。けれどもこれを以て人がその人たちを裁くとすれば、あの律法学者たちと何ら変わらないことをしていることにもなります。イエスは、律法を守れない人たちのもとへ入っていき、救いの手を伸ばしました。体制に与せずむしろ権力に一方的に虐げられ、弱い立場にある人を救うことがイエスのしたことであるとしたら、キリスト教界がどのようにすればよいのか、新たな道が見えてきたのではないでしょうか。
 
それにしても、なんでもありというのもまた問題です。近年も聖職者の性的なスキャンダルが世間を賑わわせていますが、日本ではそんなに大きく取り扱われないのは、深刻さの度合いとキリスト教の社会的影響が違うからでしょうか(日本でこうした犯罪要件がないという意味ではありません)。いまから千年ほど前にイタリアの枢機卿ペトルス・ダミアニが書いた「ゴモラの書」という文書が、このソドムの罪という表現を表に出し、教会を改革しようとしたと言われています。要するに、教会の内部で、聖職者において、性的な乱れがあることを厳しく追及するものだったのです。
 
ロトの事件に先立ち、アブラハムは、ソドムとゴモラとを滅ぼすという神の決意に立ち向かい、いわゆる「とりなし」をしたことが有名です。神よ、畏れ多くも申し上げますが、もしかの悪徳の地に50人の正しい人がいたらその人たちも滅ぼしてしまわれるのですか、と。神はアブラハムの申し出を受け容れます。しかしアブラハムは、本当は50人も正しい人がいるとは信じていませんでした。では45人では。神はこの値切りに応じます。アブラハムはさらに5人減らして交渉します。アブラハムは、10人まで認めてもらったところでとりなしを止めました。10人はいるだろう、と。しかし、どうやらそうではなかったようです。
 
この「ゴモラ」と聞くと、別のものが頭に浮かぶ方も多いことでしょう。ウルトラマンに登場した古代怪獣ゴモラは、ウルトラシリーズの中でも人気の怪獣のひとつではありませんか。発掘されたこの怪獣、大阪の万博に出展しようとした人間から麻酔が覚めて逃れると大阪城を破壊するという暴れ方をしたので、ウルトラマンが立ち向かいます。ウルトラマンは一度は破れますが、再度の戦いでゴモラを倒します。しかし果たしてゴモラが悪かったのか……。
 
ゴモラは、その後もウルトラシリーズで多数出演し、後の80、パワードを経て、平成ウルトラマンシリーズには度々登場しました。それだけ人気があったということでしょう。
 
ソドムという怪獣はいなかった――確かにゴモラのメジャーさには適いませんが、実はいました。ウルトラマンダイナ(つるの剛士!)に、超高熱怪獣ソドムとして登場しています。溶岩を食べ、火山の噴火を抑えていたため、益獣とされていました。しかし地表近くに来たために風邪をひき、そこで留まったために地上の気温が上昇したことで、スーパーGUTSがソドムを冷やそうとします。ソドムは益々病状が悪化し、体温が上昇したことからウルトラマンダイナが出動。ソドムのくしゃみで風邪だと分かり、ダイナはソドムを地底深くに返してやります。めでたしめでたし。
 
ウルトラマンティガ(主題歌はV6!)に始まるレ平成からのウルトラマンシリーズでは、一方的に怪獣を倒せばよいという考えが反省させられています。これは、円谷プロの経営危機もあり、かつてのウルトラマン世代の子どもだった人たちを満足させる大人を対象とした内容を考慮したものとも見なされます。
 
どうしてウルトラマンシリーズに、ゴモラだのソドムだのといった怪獣が登場するのか。それは、円谷プロを築いた円谷一家が、カトリック信仰をもっていたことと関係があります。ウルトラマンのシリーズには、随所に、聖書のモチーフや名称が用いられています。そういうメッセージ性も受け止められることだと思います。同じく信仰をお持ちだった市川森一さんの脚本も背景にありました。ウルトラマンAのときは、ゴルゴタ星でウルトラ兄弟が十字架に架けられるなどというシーンもありました。超獣(エースのときは怪獣とは呼ばなかった)バラバの回でした。
 
私はこうしたマニアではないので、この続きは、こちらをお勧めしておきますので、ご堪能ください。なお、上に揚げたストーリーですが、さすがに私はこんな詳細を覚えているはずもなく、ウェブサイト「ピクシブ百科事典」の記録を用いました。
 
ウルトラマンシリーズに関しては、この類のエピソードは限りなくあります。これを機会に見直してみるのは如何でしょうか。え、若い皆さんにはすべてが初耳だって? まあ、そうでしょうね……。現在はウルトラマンロッソ・ウルトラマンブルのシリーズが放映されていますが、円谷家は10年ほど前に経営を完全に離れることになり、それからのウルトラシリーズは、信仰云々とは別次元で続けられていることになっています。



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