ぶどうの木

2018年4月29日

箱舟から出て、水の引いた新生の地に降りたったノアが、最初に作った作物がブドウでした。それほどに、かの地でブドウというのは古く、おそらく民族のアイデンティティともなりうるほどになじんだ果物であったのです。
 
良いブドウが実る土地は、痩せた土地です。栄養分がないという程度でなく、びとい土地、石だらけで感想しているなど、およそ作物など無理と思われるような場所に育ったブドウは、優れた実を結びます。ブドウは水や養分を求めて、その根を土の中深くに伸ばします。25mほど潜ると、良い実になるのだとか。8〜10年くらいかけて深くまで根を伸ばすことにより、ブドウの木は逞しくなっていく。すぐに水源を見つけて根を伸ばすのをやめた木は、良い実をもたらさないのだそうです。
 
さらに、結実をよくするためには、剪定作業が欠かせないといいます。以前の教会にブドウが植えてありましたが、せっかく小さな実ができかけたとしても、枝を思い切って切ってしまいます。そうすると、残された枝にすべての栄養分が注ぎ込まれ、大きな実を実らせるようになるのです。
 
手軽に手に入り、労苦なしで結果が出る。人間は、それを求めてきました。そのために様々な工夫をし、協力をし、改善を努めてきました。そのためにより生産性が高まり、さらにまた労苦なしで生活ができるようになりました。しかし、安楽な環境が良い実をもたらさないというブドウの例は、私たちに何かを教えてくれるような気がします。
 
(参照 :『食べものからみた聖書』河野友美・日本基督教団出版局)



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