うさぎの勇気

2017年9月25日


先日、能古島に行ってきました。妻と2人です。休日や勤務時間が主日のほかは真逆なので、休日が揃う機会は、少しでもこうした時間が過ごせたら、と出かけることがあります。
 
船はわずか10分ほどですが、楽しめました。島に着くと、アイランドパーク行きのバスが待っています。たいへんな山道を、バスが縫うように上ります。しかもバス同士離合(これは九州方面の用語だそうで。すれ違うこと)までするという離れ業。
 
長閑な場所で半日過ごし、命の洗濯をしてきました。花のシーズンではなかったというのがやや口惜しいところですが、こうした田舎は私にも妻にも馴染みます。海の眺めや潮の香りもさることながら、なんといっても今回は、うさぎ。エサが100円のカプセルに入って売られています。子どもがそれを金網から入れると、何十匹かのうさぎが鯉のように集まってきて競っていました。全体的にはやせ気味なので、いくらエサを与えても大丈夫なのでしょうか。
 
一度そこを離れてぐるりと園内を巡り、再び最後にうさぎのコーナーに戻ってきました。今度はエサを買います。指を噛まれるので注意、と札がありましたが、私は確信を以て、手ずからうさぎにエサを与えました。おそらく、指先でエサを握りうさぎの目の前に差し出すと、間違って指先をかじられるのでしょう。私は掌に載せ、柵の上から手を伸ばしてうさぎの鼻先に一粒ずつ見せてみました。こちらも精一杯手を下げるのですが、うさぎの身長からはやや高い。岩場の上にいるうさぎからは、なんとか届きますから、ぺろりと私の手からエサを取りました。うさぎの顎くらいは撫でられます。時に、歯の感触もありました。でもかじられることはありません。
 
中には、人間の手から、というのは警戒するうさぎもいて、近寄らないタイプの子もいました。私はもちろん脅かしたりしませんから、一度安心と分かると何度も来る子も。つまりは、ちょっとした勇気があれば、エサにありつけるのです。
 
折しも、翌日の礼拝でのテーマは「勇気」。それは、ちょっとした一歩の踏みだしではあるのですが、結局何かくよくよよくないことばかり考えて、できないというのがからくりです。やって失敗しての後悔よりは、しなかった故の後悔のほうが断然多いんだ、そんなエールもありました。
 
うさぎたちがもし人間だとすると、怖がらずに信頼して、ほんの少しの勇気をもって近づいてくる行動を起こせば、おいしいものをいくらでももらえるという情景に、通じるものがあるように思えました。信頼の心がすでにあるならば、行動を起こしましょう。あのうさぎたちの姿は、私たちの島の中での、いちばん大きな体験であったのかもしれません。
 
ただ、勇気のもてなかったうさぎをも、心で応援はしていましたけれどね。

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