熊本地震から10年の「日常」
2026年4月14日

私が地震について体験したことと言えば、阪神淡路大震災のときに京都でその揺れを体験した。福岡に戻ったとき、誰も目を向けないような地震保険に入った。2005年の福岡西方沖地震のときは、教会の礼拝中に揺れを知った。マンションにかすかなタイルの剥がれがあったために、地震保険が下りた。生活が楽ではなかったので、それで子どもの勉強机を買うことができた。
東日本大震災は、九州へ直接影響することではなかったが、地震の怖さを幾らかでも知る中で、祈るばかりだった。そして2016年、熊本地震が起きた。最初の大きな揺れは、塾での授業中だった。教室内に、生徒がもっていたスマホの警報音が鳴りまくった。机の下に潜るように指示した。揺れはそれなりに大きかった。今日は、熊本地震から2年。さらにその2日後には、二度目の震度7という前代未聞の揺れが起こっている。
熊本の教会の人で、閉じ込められて困っていた人のツイートをハラハラしながら見守り、応援のメッセージを送るようなことがあった。やがて、教会から現地に行く企画ができて、最初は食器の調達のために同行したが、次からは、益城町でカフェを開き、憩いの場を設け、仮設住宅の方々を基本的に対象とした、交流の場を設けた。高校生時分から毎日淹れているコーヒーの趣味が活かされた。ささやかな営みであったが、毎回来てくださる方が何人かいて、ひとしきりおしゃべりをしたり、歌を歌ったりした。
仮設住居がほぼ撤去されて集約されるに至るまで、2か月に一度ずつ通った。教会として営んだが、いわゆる伝道ということは一切表に出さなかった。こういうとき、勘違いする外部の方がいて、宗教勧誘目的でボランティアをするような批判をする人が時折いるのだが、逆に言うと、そういう組織が実際にあることを悲しく思う。それどころか、金集めのために人の心を弄ぶことを、正義だと主張するような団体が、恰もキリスト教団体のように振る舞いつつやっていたということに対しては、憤りしか覚えない。
2022年には、益城町復興まちづくりセンター『にじいろ』ができた。教会の活動が終わってからのことだったが、私は個人的にそこを訪ねてもみた。新しい施設は木の香りのする、気持ちのいい建物だった。地震のことを、伝え続けてほしい。
そして地震から10年のこの機会に、一冊の本が出版された。やっと届いたばかりで、私もまだ読めていないので、本の内容についてはご紹介できないことをご容赦戴きたい。
『日常』という題で、B5サイズで160頁に、どの頁にもカラー写真が写っている。これで税込み1100円というのは破格の安さである。発行社は、益城町。30人・組のインタビューが集められているだけ、といえばそれだけだが、様々な思いの人の声が集められている。「おわりに」に、そうした事情が説明されている。日常を取り戻した人もいる。今も取り戻せず、苦しんでいる人もいる。日常って考える余裕もないままに、目の前を必死に生きてきただけだ、という人もいる。
ただ、人々の想いを遺したい。多くの人に伝えたいし、それが誰かの役に立つことを信じて、本書はつくられた。以前に、一部の記録誌がつくられたことがあったが、今回は、人の声が集められている。
2026年4月16日、20:00から「10年−NEW STARTING LINE−」熊本地震10年ショートムービー」が公開される。関心を寄せて戴ければ幸いである。また、この『日常』は、熊本の各書店のみならず、Amazonでも購入できる。お取り寄せ、如何だろうか。