課題作文にはメモをとろう
2026年1月18日

中学生に、推薦入試の作文の指導をしている。そのとき、メモの取り方をできるだけ具体的に伝えたいと思い、中学生たちにメッセージを送った。私の見本など、拙いものでしかないのだが、恥を忍んで、ここにも公開してみようと思う。以下、すべて敬体で綴っているのは、そのためである。
■メモをとる
まず、「必ずメモをとること」です。考えながらいきなり文字を落としてゆくなど、プロの作家でもできるものではありません。「メモ」は、思いついたことからバラバラにメモして構いませんが、まずは「結論」を決めましょう。あなたが一番、「伝えたいこと」です。
それを伝えるのには何を相手に示せばよいでしょう。素材をメモしましょう。メモにどれくらい時間をかけるかは人それぞれですが、規定の文字数を書き上げ、推敲する時間を差し引いただけの時間を差し引いた程度は、メモの準備に費やしても構わないのです。「嫌なことは早く済ませたい」という人間の心理は理解できます。「早くこの束縛から逃れたい」と思うのも本当でしょう。しかし、作文は自分を見つめ、自分に問いかける貴重な時間でもあるのです。たんまりと、付き合って戴きたいと思います。
さて、思いつくことをメモして、素材が幾つか出てきたら、読み手に示す「順序」を考えましょう。その順で読めば、スッと流れるように伝わってゆく、そうした筋道を、メモした素材に「矢印」を書くか、「丸番号」を書くかして、流れを決めましょう。もちろん、メモしておきながら、結局使わなかったものがあっても構いません。あれもこれも盛り込むと、作文は逆に薄れてしまいます。一つのことを、濃く書く方が、読む人にあなたの心が伝わります。
文章を書きながら、「次は何を書こうか」と考えて立ち止まるのは、下手です。もう書くことの流れは、メモの内容と筋道の決定により決まっているはずだからです。また、途中でその次に書く内容を考えるようにすると、「論旨がぶれる」可能性が大きくなります。途中で「いいこと思いついた」と書き加えるようなことをすると、ほとんどの場合、作文は台無しになります。あなたは歌を歌うとき、最後の方で違う歌を聞かせたいと思って急に曲を変えますか?
■メモの実例
「メモ」の内容を実例で示してみます。( )内は説明のために補足しています。
過疎化してゆく故郷の役に立ちたい。(動機)
政治家になる。(目標) 総務省に入り過疎対策に貢献する。(具体的目標)
それには東京大学に入る。(当面の目標)
過疎の故郷では一所懸命に勉強した。(これまで)
それでまずは東京の高校に入る。(近い目標)
まだ15歳なのに東京で生活できるだろうか。(課題1)
親元を離れ、叔母の家に住まわせてもらう。(課題の解決1)
しかし都会の高校生に田舎育ちの自分が馴染めるか。本当に首席を目指せるのか。(課題2)
勉強することはもちろんだが、良い友だちをつくりたい。政治には、知識や学問も必要だが、人間関係も大切だ(課題の解決2)
では、どんなふうに作文にしてゆくか、その構造を考えてみましょう。
一番伝えるべき目標は……と考えて、「過疎対策」を掲げ、そのために官僚になるという目標を示すことにした。ここから書き始める。背景として、自分の故郷が過疎問題を抱えており、未来が暗いことを挙げる。官僚になるには、東京大学がいい。そのためには東京の高校で首席になるのが近道だ。
だが、田舎で一番の成績でも東京ではどうだろうかと不安がある。そもそも田舎育ちの自分に都会での生活ができるのか。幸い信頼できる叔母が東京にいるから相談もできる。勉強そのものには、田舎も都会も関係がないはずだ。そして勉強も大切だが、田舎とは違う良い友人をつくりたい。人間関係を大切にしてゆきたい。政治には、学力も必要だが、人の心を知ることがきっととても大切だと思うからだ。それが、私がいつか故郷の過疎問題を切り拓くための力になることを信じている。
これは、作文そのものではありません。先の「メモ」を素材にして、流れを決め、どのようなことを書くのか、頭に浮かんだスケッチです。(参考「スキップとローファー」)