地下鉄サリン事件から30年
2025年3月19日

実のところ、福岡の人間として、この日は、福岡西方沖地震から20年、というのをメインに置きたかった。最大震度6弱を記録し、福岡の地震としてはそれまでで最も大きな地震だと言えるものだった。NHK連続テレビ小説「おむすび」で知られた糸島沖地下に震源をもつが、少し離れた玄界島での被害が甚大だった。私はそのとき福岡にいたが、当時地震保険に入っている人が少なく、マンションのタイルが少し剥がれただけで保険金が下り、ずいぶんと助かったことがある。
だが、同じ日付で、その10年前に、忌まわしい地下鉄サリン事件が起きていた。
事件を詳しく追いかけたわけではない。被害者の痛みを、正視できなかったのは、私の弱さである。せいぜい、オウム真理教という宗教団体についていくらか目を注ぐことと、そうした宗教に惹かれていく人間の心理について考えてみる、という程度であった。宗教を信じるということについては、我が身において一定の経験と理解がある。自分を正当化することで、精神的に支えられる、ということはそれなりに分かる。だが、自分を正当化することで、危険な暴走が貫かれてゆくとなると、これは放置しておくわけにはゆかない。
だが、もっと当事者のことにも、目を背けず関心をもたねばならない、と思わされるようにもなった。私が手に取ったのは、村上春樹氏のインタビューの労作であった。『アンダーグラウンド』と『約束された場所で』である。前者は被害者とその家族などへのインタビュー、後者はオウム真理教の信者へのインタビューである。
このインタビューのために、ずいぶんと準備をし、インタビューの手法についても、細かく気を使いながら、時間をかけて果たした作品である。事件の法的な問題についてではなく、人間の心を見つめたいとお考えの方には、これらの本をお薦めしたい。
なお、同じ3月20日の日付において、2021年には、宮城県沖地震が発生している。大きな被害こそなかったが、マグニチュード6.9、最大震度5強を観測している。東日本大震災との関係については知識をもたないが、同じ日であることで、心に刻まれ得るものとなる。
災害や事故または事件は、当事者でなくても忘れられないことがある。特定の日だけでなく、継続して心に納めていたいと思う。小さな心には入りきれないかもしれないが、人の痛みを、祈るように。