『ヤンキー君と白杖ガール』

2021年10月25日

2021年秋の連続ドラマで、一番人気だということには驚いた。
「恋です!? ヤンキー君と白杖ガール」
 
コミックスは、連載当初から気になっていた。いつか読みたいと思っていたが、ドラマ化となってこちらを見ることにした。
 
なんといっても、視覚障害者当事者からの支持が絶大なのである。地味な番組になるかと思っていたが、人気が出てよかったと思う。というのは、視覚障害ということについて、こんなに多くの人に理解を広め深めてくれることは、めったにないからだ。
 
教会でも何人か、視覚障害者と出会ったことがある。偶々皆全盲の方だったが、ドラマのようなロービジョン(弱視者)を含めると、もっと多くの人をそこに含めてもよいかもしれない。声のかけ方や身体の支え方なども教えて戴いたし、何に助けが必要かも、個人差はあるが、気づくことができるようになった。点字の技術はないが知識はあったので、『讃美歌』(これは点字版がある)でない曲を礼拝で歌うときには、歌詞を点字で打って提供することもあった。手話通訳がいて点字があるという教会は、いくらか人に優しい教会であるとは言えないだろうか。
 
それでも、このドラマを見ていて、これまで気づかなかったことをいろいろ教えてもらった。ドラマの中で、それを主人公が一つひとつ説明してくれるのだ。ストーリーの上でも、点字ブロックやはみ出した木の枝がいかなる存在であるのか、認識させてくれる展開がある。また、各話に一度、全盲に近いお笑いタレント・濱田祐太郎さんが自身の体験を楽しく語ってくれるのも好評だ。これは、元のコミックスの作者も大いに喜んでいる。この「うおやま」さんは、ツイッターで、毎回ドラマに大興奮して呟きまくっている。殆ど素人のマニアックなファンのように見えるのが面白い。
 
ドラマって、多くの人の理解を導くのにとてもよいものだと思った。ろう者のドラマもこれまで時折あった。それで手話が認知され、昔のような偏見がとれてきたことは喜ばしいことであるが、それらの多くは、「聴覚障害であるにも拘わらず云々」という感じもした。つまり、日常生活の中で何がネックになっているのか、社会の中で何が妨げとなっているのか、それを認識させてくれるようなふうではなかった。その点、この白杖ガールのドラマは、生活の中の一つひとつを丁寧に描いていて、まるで視覚障害者団体がアピールのために作ったかのような効果をもたらしていると思うのだ。聴覚障害者についても、もっと理解が進むような道はないものだろうか、と思わされる。



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