台湾
2021年6月18日
日本でプレイしている台湾のスポーツ選手がインタビューで、日本が台湾にワクチンを提供したことへの感謝を口にしたという。それに限らず、台湾では非常に日本のこの振る舞いを歓迎し、喜んでいるらしい。その様子の報道も垣間見た。「カンシャ」と照明で文字を浮かび上がらせたホテルもあった。
地理環境が似ているせいからか、台湾は日本の自然災害に対して非常に大きな関心と、限りないような援助とを、これまで寄せてくれている。東日本大震災のときにも、何百億円という支援金が寄せられている。それも、市民からの募金が相当集まったようである。こうした支援に関する交流は、阪神淡路大震災や、台湾地震(たとえば1999年)などを通じて、これまでも強い関係性をもってきた歴史がある。近年の豪雨においても、どれだけ台湾の方々が心配し支援の手を伸ばしてきたか、計り知れない。今回はワクチンを提供したが、これまでの援助を思えば、当然すぎるほどのことであるとも言えるかもしれない。
しかしとにかく、友好関係があるというのは良いものだ。これが中国がそこに入ってくることで、政治的には難しい局面になるのであるが、いまはそれを問題にするつもりはない。それに、歴史に疎い私のことであるから、台湾の歴史、あるいはまた台湾と日本との関係の歴史については、詳しい方がインターネットの中で良い説明をなさっていることだろう。関心をおもちの方は少し調べてくると、ふだんなかなか意識していないようなことが目に入ってくるのではないかと思われる。
台湾における宗教の情況は、仏教と道教が三分の一ずつを占め、キリスト教は4%を下回るほどだという。しかし日本にキリスト教が伝来したのと近い時期に伝えられたキリスト教は、それなりに認められる存在となっているようだ。この辺りも、傍観者がどこかで聞いたことをこのように伝えても、説得力もないし、信頼性も薄いかもしれない。繰り返すが、関心をおもちの方は、いまは簡単に調べられるので、調べて学んでみては如何だろうか。
台湾と災害とキリスト教といえば、この方が第一に挙がってくるべであろう。福音歌手の森祐理さんは、阪神淡路大震災で弟を喪っているが、台湾の地震を他人事とは思えず、歌で励まそうと台湾へ飛び、以後50回以上も台湾にわたり、様々な災害地で人々を励ましている。台湾の言葉を覚え、現地の言葉で歌うことで、人々の心を掴んだ。何よりも、災害で挫けた人々の心を20年にわたり支え続けてきた。そのために2019年、台湾の外務省(外交部)から勲章を受けていることも大きく報じられた。
台湾と日本とでは、このような利得に関わらない関係がつよく結ばれている。ワクチンを通じてもつながりもまた、この延長上にあると見てよいだろうし、活躍したその選手も、自然に感謝を口にしたに違いない。なにはともあれ、これを接種する医療従事者の労苦などへも思いを馳せつつ、台湾の方々こそ、医療従事者を大切にし、無理をさせないことを十分配慮しつつ人々の安心へとつなげていって戴ければと願う。残念ながら日本では、医療従事者をこき使った上に、リスペクトがないばかりか、差別までするのだ。それはワクチン接種予約のコールセンターや関係諸機関の公務の方々も同様である。謂われなき暴言を日々浴びて、精神的にまいっている人も少なくないのだという。暴言を吐くのは誰か。私たち自身である。風評被害が勝手に起こるのではない。私たち自身が、風評を流しているのである。