ユダヤ教の祝祭 (ジュダイカ・コレクション)
2021年4月17日
西南学院大学博物館企画展が2021年4月17日から始まる。ユダヤ教の祭具をはじめとした様々な物(ジュダイカ)の展示会である。聖書考古学が専門だった関屋定夫名誉教授が研究し、また集めたものが多々ある中で、今回は祭具関係を展示することとなったという。
そのための研究叢書として、本書が発行された。一種の目録であるが、必ずしも今回の展示と一致しているわけではないという。つまり、本書はただの目録のためにつくられたものではなく、ひとつの資料写真集なのである。そのため、一つひとつの物品の解説に加えて、ユダヤ教の祭りや習俗などについての、簡潔ではあるが的を射た説明がふんだんに盛り込まれており、用語集や祝祭一蘭など、資料性に富むブックレットとなっている。なにより、カラー写真とその紙質など、美しく贅沢につくられているため、聖書を繙く場合に必携の資料として常に横に置いておきたいものとなっているといえよう。
旧約聖書を読んでいても、私たちはそう簡単にはイメージできないものが多い。やたらと作り方が細かく記述されている律法の箇所もあるが、文で書かれていてすべてが分かるというのは原理的にも無理だ。そこへいくと、百聞は一見にしかず、この写真を見れば、ああこれのことか、と合点がゆくものばかりである。私たちの側の勝手な思いこみや観念で、ユダヤ教の規定や生活について、買ってな決めつけをこれまでしていなかっただろうか。実物を前にして、初めて知るところのもの、理解できるところのものは、きっと多々あるに違いない。現実にイスラエルを訪ねることもままならず、過去の時代に戻ることもできない中で、空間的にも時間的にも超越できるような、こんな展示物との出会いは、聖書観や信仰にも、影響を与える可能性があろうかと思うのだ。
決して、微に入り細を穿つというものではないかもしれない。ほんの40頁の小さな写真集である。資料数もやたら多いということもない。だが、聖書がビジュアルに感じられるという意味では、代え難い役割を果たすことになるだろうと思う。
企画展は7月31日まで。福岡市も新型コロナウイルスの感染拡大がまた懸念されている。会場でも、手指消毒やマスク着用などを呼びかけている。また、人との距離や会場の物への接触など、制限が設けられている。お越しの場合には十分気をつけて戴きたい。なお、会場では写真撮影が許可されており、SNSなどへの公開も認められている。もちろん、入館料は不要である。味わいのある建物もお楽しみ戴けるだろう。何事も東京中心の展示会ばかりの中で、福岡でこうした資料に接することは、個人的になんともうれしいものである。