福岡県立高等学校入学者選抜学力検査
2021年3月10日
2020年から2021年にかけてはインフルエンザの流行がなかった。或る小さな医院では、全く一人も患者が出なかったというが、たぶんそこだけではないだろう。
これだけ手洗いが徹底されると、インフルエンザのウイルスは、発生しても他に感染しないのだろう。逆に言えば、これだけ衛生観念を徹底されれば、毎年数千人というインフルエンザによる死亡者がいなくなるのであり、感染して泣く受験生がなくなるということだ。
いや、もちろん、だからコロナウイルスがあったほうがよいなどと言いたいはずはない。衛生観念のほうの問題だ。それにしても、インフルエンザは抑えこむことができた衛生的な生活でも、新型コロナウイルスの感染拡大は防げなかったのだから、こちらの感染力の強さには改めて驚かされるばかりである。
海外で子どもの死亡率を減らすには、まず衛生教育をする場合があるという。きれいな水の確保はひとが生きるために大切な条件となる。中村哲さんが水を引いたのも、作物のためであると共に、こうした視点があったのではないかと思われる。薬も役立とうし、農業や政治的不安定などのために貧困に喘ぐ地域の人々を助ける手段はいろいろあるに違いないが、ひとつには衛生観念が、それほどに重要だということが、いわゆる文明国のありさまからも証明されたとは言えまいか。
先の話に戻るが、本日は福岡県の高等学校入学者選抜学力検査の実施される日である。受験学年になろうとするとき、この生徒たちは、新型コロナウイルス感染症の影響をまともに受けた。その労苦は、日本全国の教育関係者も共に味わったとも言えるが、福岡県教育委員会は、出題範囲について今回に限り一定の除外を設け、受験生の負担軽減を図った。
但し、これをすると、たとえば数学について顕著であるが、過去問を使うことができない場合があり、出題内容についても傾向が変わることで対策がむしろどうなるか分からないという情況も生み出した。具体的に言うと、「三平方の定理」の応用という、平面図形・立体図形双方に多用されてきた要素が抜け落ちるというのは、図形の問題を全く様相の違うものに変える可能性があるということだ。これは後で問題を見てから初めてどうなったかコメントができようかと思う。
国語と英語においては、第3学年で学習する漢字と英単語・熟語を外すという、とてつもない方法を示した。しかし、それらを使わないわけにはゆかない場合があるため、ふりがなをつけたり、注釈をつけたりするのだという。ともかくそれらについて質問しないということになり、果たして実際どのような形になるのか、実物を見るのが楽しみである。受験生にとって、それは確かに軽減になるだろうとは思うが、どのみちそうした単語などを軽く見ていると、今度は高校入学後に差し支えが生じるわけで、結局例年と同じように学習しておく必要はあると見なければなるまい。その意味では、形だけの軽減措置であるという見方もできようかと思う。
しかしどんな背景や事情があっても、受験生本人にとっては基本的に一生に一度の体験であり、多くの子にとり最初の経験である。人生を決定するようなことはないが、少なからぬ影響を与える場面に遭遇している。例年と比べてどうだなどという話は、実のところさして重要ではない。横並びの中で、自分がどう乗りこえていくかというところであり、そこで培った努力や真面目さというものは、これからの歩みに必ず益となるものと信じたい。
この結果が出る来週は、君のゴールではない。新たな始まりなのだ。