福岡の学校選びがわかる本・大学の約束
2019年11月8日
他地域の方々には申し訳ありません。あるいは類書があるのではないかと思います。最初の本はとりあえず福岡版を取り上げます。
中高進学のための情報誌です。従って、小中学生とその親にとっておいしい情報が詰まっています。学校の宣伝がけっこうありまして、気になる学校が掲載されていたらラッキーです。その学校の教育方針をはじめ、制服や学校生活もたっぷりと紹介されます。もちろん学習風景や特徴など、学校がアピールしたいことは漏らさず記事となっています。
ただの宣伝誌か。そう言われればそれまでかもしれません。だからこそ300円程度でこれだけのカタログめいた上質の本が手に入る、というのも本当だと思います。
しかし、今回この「2020年記念号」と称するものは、相当に読み応えがあります。2020年というのは、新しい教育制度が本格的にスタートするとされている年になります。もはや、親世代の常識というものは、全く通じなくなります。これについての解説が、これまた実にたっぷりと説明されているのです。これに相当する情報を得るためには、ほかではとても300円程度では無理でしょう。
これから受験するお子様をお持ちの家庭では、これで実情を知るとよろしいかと思います。とはいえ、「アクティブ・ラーニング」の何たるかもご存じない方には、そこから知識を仕入れなければならないかもしれませんが、本誌でもだいたい掴めるだろうとは思います。
そして家庭にそうした学校関係の人がいないという方も、たとえば教会関係者であれば、知っておかねばならないことが沢山載っているとお考えください。苟も教会に子どもたちを迎え入れたいと思う人が、その子どもたちがどういう教育を受けているかを知らないで、そんなことができるでしょうか。ただでさえ、大人の勝手なイメージで子どもや若い世代の立場や考え方を分かったつもりになり、決めつけてしまうようなあり方をしているからこそ、そっぽを向かれているということに、お気づきではないでしょうか。
この類のものには、仕事柄毎年目を通している私ですが、今回の「2020年記念号」は特に、新しい時代の教育制度やそこで子どもたちに求められていることなど、非常に詳しく学べる一冊となっています。CSに子どもが来ないのをどうするかとか、若い人に福音わ伝えるにはどうしたらよいかとか、教会に共通の悩みの大きな一つがこのあたりにあるのだとすれば、子どもたちとそれを取り巻く環境に無関心や無知であることはできないはずです。しかも教育は、次の世代の社会(国家?)をどうしていくかの設計図でもあります。教会のあり方に関わらないはずはなく、今後の教会のためには欠かせない理解を提供してくれることは間違いありません。そのために、福岡の方にはこの安価な情報誌をお薦めしておきます。
大人は、えてして、斜に構えた批判や皮肉をこめた記事を楽しみます。実は本質や実態をまるで知らないのに、新聞コラムや目立つコメンテーターの意見を喜んでいること、多くありませんか。また、ふだんは政府に任せっきりで、いざ英語の入試制度の説明に大臣が失言しただけで、あれはけしからん、などと批判していい気持ちになっているだけ、という程度で過ごしていませんか。英語や国語の入試制度をワイドショーの報道を聞いて、何も考えていないよね、などと呟くばかりでは、有害な「大衆」のひとりになってしまっているだけなのです。
もうひとつ、リクルート発行の「スタディサプリ 大学の約束」は、大学教育に何が求められているか、それが日本社会をどのように築いていくかという視点で、高校生が知るに相応しい内容ですが、これもまた、いまの企業や社会が学生に何を期待しているのかなど、広く知られておくべきことが集められています。こちらは様々な人の声が届けられているものだとお考え下さい。「2030年問題」という言葉の意味がまるで分からない場合は、目を通すことをお薦めします。こちらも宣伝目的があるためか、内容量に比して500円程度で入手できるようになっていて、お得感があります。
大学というところが何を求められているのか、求めているのかを伝えようとしています。そもそも小中高を巻き込んでいる教育改革というものは、大学を改革するが故に、その準備段階としての高校・中学・小学校というように波及しているものであって、そもそも大学がどうなっているのか、という目的が、教育全体を変えていると考えたほうが分かりやすいのです。文学や芸術を削りにかかる政府の本音を批判することにまず走りがちな知識人ですが、まずは実態と、そこに置かれた若者たちの生き方や考え方を知る、そこから始めることは大切ではないでしょうか。