よくわかるクリスマス
2018年12月23日
#よくわかるクリスマス とのハッシュタグで、この一カ月間、教会のアカウントでツイートしてきた記事を集めました。けっこう忠実に140字以内という枠の中で綴ってきたなぁ。お探しになるのも大変かと思い、ここにまとめてプレゼントさせて戴きます。
今日から一カ月余り、『よくわかるクリスマス』という本を道標として、クリスマスについてつぶやいていきますね。皆さんのクリスマスが、あたたかな、心に残るものでありますように。
そもそも「クリスマス」は英語だと「Christ」から始まりますね。「クリスト」とカナで書くこともありましたが、これはもちろん「キリスト」。「マス」は「礼拝」でミサに近い言葉です。キリストを礼拝することなのでした。
新約聖書でクリスマスらしい記事があるのは、マタイによる福音書の初めのところと、ルカによる福音書の初めのところです。牧歌的な物語のようですが、政治的にも心理的にもかなり厳しい内容となっています。決してロマンチックじゃあないんですねぇ。
マタイとルカは、イエス生誕の物語を別の角度から綴っています。しかしどちらにせよ、マリアの不倫疑惑が関わっています。このマリア、当時の風習からすると恐らく十代半ば、死罪とすらされる事態に立ち向かう少女と、その婚約者ヨセフ。いやぁ、ドラマですよ。
ルカの福音書によると、イエスの誕生に先立ち、ヨハネという従兄弟の誕生のドラマがありました。救い主が来るぞと先行して触れ回る役割を演じることになる人物です。こちらも不思議な導きの中で誕生したのでした。後の、バプテスマのヨハネです。
ルカは、ヨセフとマリアがベツレヘムに来た理由を、住民登録つまり戸籍に関して説明しています。ローマ帝国の徴税政策に基づくのでしょう。歴史的に疑問視される記述でもありますが、ベツレヘムという小さな村は、旧約聖書の記述と結びつく舞台となりました。
ヨセフは、そのお腹に自分ではない誰かの子を宿したマリアを守ります。身重の妻を旅に連れて行く理由は定かではありませんが、ともかくベツレヘムに来たところでマリアは出産します。恐らく農家の一部で家畜を住まわせる暖かな間であったのでしょう。
さて、羊飼いたちに天使が救い主の誕生を知らせた記事は、ロマンチックで素敵ですね。ただしこの羊飼いは一般に、強面で野蛮な無教養なタイプだと見られていました。体力勝負のメンバーです。救い主の誕生は、エリートたちからすればけしからん人々に知らされたのです。
博士と古来訳されていましたが、賢者とか占星術の学者とかいう新しい見方でも知られるようになりました。星の観測は天文学と占星術の合体したようなものでした。イエスの生涯を暗示する3つの贈り物をイエスに届けたという、外国人でありました。
慣れない土地、粗末な環境で生まれ落ちたという、救い主イエス。祝いに訪ねたのは、粗野で教養のない当時の羊飼いたちと、イスラエルとは関係ないような外国人の学者たちでした。しかし地元ではちっとも歓迎されなかったのです。イエスの生涯をこれも象徴しています。
イエスの降誕時、ユダヤ地方は、ローマ帝国の支配下にあり、ユダヤ文化圏にあるヘロデという手腕の長けた政治家が王として治めていました。新たなユダヤの王が産まれたという学者たちからの知らせに、幼児を虐殺したと聖書は記します。権力者の小心さを覚えます。
12月25日という日付がイエスの誕生日であるという保証はどこにもありません。古い時代には春に産まれたとも考えられていました。いろいろな説明があるかと思いますが、後にキリスト教を受け容れたローマ社会の冬至の祭を意識した制定であったと見られているようです。
イエス・キリストの誕生日としてもう一つ掲げられることが多いのが、1月6日です。イエスの生誕・洗礼・カナの婚礼の奇蹟が皆この日だ、とも。今は概ね、博士たちの礼拝の日としてこの日(公現日)を「公現祭(エピファニー)」して祝い、この日までをクリスマス期間としています。
さて、問題は、サンタクロース。諸説があり、諸伝説が混じった末だと見られますが、聖ニコラオスなる人物が関わるという見方が強いようです。その記念日は12月6日。これがクリスマスにつながり、各地の老人伝説とも重なったのかしら。だから、サンタさんは、確かにいるんです。
アドベントの期間、クリスマス礼拝まで4週を数えます。近年アドベントクランツと呼ばれるろうそくを4本用意して、毎週ひとつずつ火を灯す数を増やす習慣があります。子どもたちが日に日に窓を開く楽しみがあるアドベントカレンダーはいまお菓子の箱としてよく売られています。
アドベントの期間に入るときにクリスマスツリーを飾るのが一般的です。ツリーはルターが飾ったから、という伝説もありますが、冬も緑の葉をつけるために北欧で古来まつられていた模様。中世ドイツで礼拝に飾られたのは確かなようですが……。
16世紀の宗教改革の人物・ルターがもみの木を家族で囲んでいる姿が描かれた版画があり有名です。しかしルターの頃にはそのようなツリーはなかっただろうと言われています。ルターが家族を大切にしたこと、音楽を愛したことのイメージで描かれたものなのでしょう。
デンマークでは23日にツリーが飾り付けられ1月6日の公現日まで飾られているといいます。アンデルセンの童話「モミの木」では、色紙を切った編みかごやお菓子、金色のリンゴやクルミ、ロウソク、人形が飾られています。そしててっぺんには金色の星が。
古くは古代ギリシアの装飾でしたが、リースは、19世紀あたりからクリスマスの飾りとして定着してきました。ヒイラギやモミなどで輪がつくられます。輪が永遠の生命、緑は家族の栄えや豊かな収穫、赤い実は太陽を表すといいますが、キリストの血もあるのかしら。
ヒイラギは、12月に赤い実をつけるのでクリスマスの飾りにもってこいです。中世ヨーロッパでよく用いられ、赤い実はイエスの血を表し、とげが十字架のイエスの茨の冠をイメージさせます。昔から魔除けに使われたのも事実のようです。
ベルもクリスマスの飾りとして定番ですね。喜びの時を告げる鐘と思いたいのですが、古くは魔除けの意味があったのだとか。長崎の町ではふだん時を知らせるのが教会の鐘だと聞きます。うらやましい気がします。
ポインセチアは色がクリスマス・カラーであるせいか、クリスマスを象徴する植物となりました。メキシコ原産で、19世紀米国のポインセット氏が持ち帰り広めたのだとか。赤いのは花でなく苞(ほう)といい、萼(がく)の外の一種の葉。花は中央の豆粒のようなところ。和名は猩々木。
イエスが誕生したのは家畜小屋と記録されていますが、その模型がクリスマス・シーズンに飾られます。これをクリブ(クリブ、クリッペ、マンガーシーンなど国により異なる)と呼んでいます。聖フランシスコが13世紀に飾ったのが始まりだという話がありますが、もっと昔から、とも。
ベツレヘムは、エルサレムから10km足らず南にある町。旧約聖書ミカ書に、新しいユダヤ地方の救世主がここで生まれると書かれてあることから、イエスもここで産まれた記事が記されています。この記事からヘロデ王に幼児が殺される悲惨な事件もありました。
日本の最初のクリスマスは、イエズス会からフランシスコ・サビエルがキリスト教を伝えたときかと思いきや、その証拠が見当たりません。1552年にトルレス神父を初めとして夜の間に6回のミサを行ったという記録が残されています。
日本のクリスマスはかつてイエズス会が、日本に見合った伝道を考えていたので、降誕祭のミサの説明を丁寧に行ったようです。1560年には、聖書に関するなにか劇を演じて楽しませたということです。羊飼いの物語のほか、アダムとエバの劇もあったのだとか。
クリスマス・カードがヨーロッパで広まったのは19世紀だと言われています。学生たちが休暇中に書いた手紙がきっかけとなったそうです。新年の挨拶もかねて人々のつながりに寄与したと思われますが、近年のSNSの中ではどうでしょうか。でも手書きのカード、いいものです。
靴下は、子どもたちにとり、サンタクロースからのプレゼントを受け取る重要なアイテム。聖ニコラウスが貧しい家の靴下に黄金を投げ入れたという伝説に基づくとされています。靴を用いる地域もあるとか。履物はエフェソ書では「平和の福音を告げる準備」なんですね。
クリスマス・キャロルは、クリスマスに民衆が歌を歌うときのもの。荘厳な、というよりも、みんなが楽しく。いまではほんとにクリスマスなの?と思われるようなポピュラーソングも数えるとか。信徒の家を夜に訪ね聖歌隊が歌うこともあります。騒音とされなければよいのですが。
クリスマスは楽しさと共に、苦しみや孤独の中にある人を思いやる時でもあるでしょう。ジョン・レノンは"Happy Christmas"の中で、「望むなら戦争は終わるのだ」と歌いました。数年後ポール・マッカートニーは"Wonderful Christmastime"で、ただ楽しもうと誘いました。
「きよしこの夜」には、19世紀初め、教会のオルガンがネズミにかじられ故障したため、急遽ギター伴奏で歌える曲を作った、という逸話がありますが、当時その区域の教会が経済的に行き詰まっていた背景も。邦訳ではカトリックとプロテスタントと別の解釈の歌詞がありますね。
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韓国では、19世紀末頃からクリスマスが意識され、徐々に浸透していきましたが、韓国併合後、1937年に「クリスマス無色」化が叫ばれ、弾圧されるようになりました。聖誕劇は、モーセのエジプトからの解放に変わることもあったそうです。
そもそも「クリスマス」は英語で「キリスト礼拝」。ドイツ語だと「ヴァイナハテン」のような感じで、「聖夜」を表す語です。フランス語だと「ノエル」、これは「誕生」の意味ですが、いまはノエルとくればクリスマスの歌を表すものと私たちは理解しています。
日本で年末によく演奏されるのがベートーベンの第九。これは楽団員が年を越せるように、とチコちゃんが説明していました。欧米では、ヘンデルのメサイア。ハレルヤコーラスはイースターのイメージもありますが、イエスの生涯を覚えるためクリスマスの時期だそうで。
一年ほど前、『愛と狂瀾のメリークリスマス なぜ異教徒の祭典が日本化したのか』という講談社現代新書が刊行されました。キリスト教サイドでなく風俗的な観点で、日本のクリスマス騒ぎの歴史を繙きます。20世紀初めにそれは始まりました。クセのある著者ですが勉強になります。
クリスマスは英語ではChristmasと綴りますが、Xmasという表記も見かけます。新約聖書はギリシア語で書かれましたが、英語のChはギリシア文字でちょうどXの形で書く(Xpistosのような感じ)ためキリストを表します。日本など一部でのみX'masが見られますが、基本的に勘違い。
クリスマスはイエスの誕生日というよりも、人として生まれたことを記念する機会。神の子が人の肉体をとったという意味で「受肉」という専門用語があります。英語だとIncarnation。肉体へと入る、ようなニュアンスです。花のカーネーションは肉の色からきているのだ、とも。
キリストが二千年ほど前に一度この地上に来た、キリスト教はこの考えに基づいています。しかしもう一度、この世界の終わりの時に来る、という予告もあります。これを再臨とよく言いますが、原語には「再」がありません。来られるのを待つクリスマスの心に気持ちを重ねます。
イザヤ書にインマヌエルとあることを、マタイによる福音書は指摘し、この書のテーマとします。が、キリストがその後インマヌエルと呼ばれることはありません。けれども「神が私たちと共にいる」の意味は全体を貫き、欧米人の名にもよく付けられるようになりました。
クリスマスの夜には、ヨハネによる福音書の冒頭もよく読まれます。そこには「キリスト」の語は見られませんが、キリストがこの世界に現れたのはどういう意味だったのか、短く表されていると言われています。深い言葉なので、一読しては分からないのがミステリー。
マリアの前に現れた天使は、神によりあなたは子を授かると告げます。この事件を「受胎告知」といいます。イエスと名づけよと命じられますが、これはユダヤではよくある名の一つでした。その名には「神・救い」の意味がこめられているそうです。
よくイエスが産まれたのは馬小屋だと言われますが、聖書に書いてあるのはとりあえず飼葉おけ。しかし家畜のいる小屋を想像するとたぶん異なるだろうと思われます。石などの家の一部に家畜を養う空間があったと考えたほうがよさそうです。
クリスマス・イブという呼び名がいつからあったのか知らないのですが、古くからあったことは、このイブという語が、英語のイブニングに関係する古い語からきていることで分かります。23日をイブイブなどという日本人の無知は嗤われているのではないかしらと心配です。
クリスマス・イブは夜のこと。ユダヤの暦、従って聖書の中の記述では、一日の始まりは日没からでした。そこでクリスマスの一日も、24日の夜から始まるわけです。クリスマスの夜というのは、いまでいう24日の夜のことで、夜から始まる一日という理解が必要なのです。
キリストが生まれたときを12月25日と定めたのは、キリスト教を公認した4世紀のローマ皇帝の時でした。しかし6世紀に生まれた年を計算してそれを西暦1年としたものの、どうやらずれがあるようです。それはともかく今年、あなたの心に、キリストが生まれますように。