はたらく細胞
2018年7月28日
アニメが深夜枠に多く移ったのは、ゴールデンタイムについての経営原理もさることながら、中にはお子様に見られてはいけないアニメをおとなが見るようになったから、という理由もあるかもしれません。お色気や性的なシーンを伴うものもあれば、血なまぐさいものも多々あります。そんな中で、確かに血なまぐさいのですが、残酷さを与えないものにいま私は、ちょっとはまっています。
7月から始まった「はたらく細胞」がそれです。人間の体の中の細胞を擬人化して、外敵に対抗するという単発のストーリーが繰り返されるものです。全身赤い赤血球の女の子がたぶんヒロインですが、全身白い白血球の工作員がクール。近未来都市のような整然とした秩序の中で侵入する敵の知らせが、エマージェンシーのサイレンとして鳴り響く……。
たとえば最近の第三回「インフルエンザ」では、体内で増殖したインフルエンザウィルスが、細胞に襲いかかりゾンビのように暴れさせます。この回の主役はナイーブT細胞。抗原とまだ一度も遭遇したことがなく未熟であるため、若いひ弱な少年です。ウィルスとは戦うことができず、危ないところを白血球に助けられます。白血球は短刀で感染した細胞を切り裂きます。このとき返り血を浴びて白血球の白いワークスーツは半ば血に染まりますから、血なまぐさいのですが、まさにこれは血の話なので、大人であれば、残酷さという概念を越えて見ることも可能でしょう。
ナイーブT細胞は、先輩たちキラーT細胞のように勇敢に戦えないと臆病になり、落ち込みますが、樹状細胞に出会って、先輩たちも昔は弱気だったことを知らされ、勇気を得ます。そうして活性化して筋骨逞しいエフェクターT細胞へ成長し、ともに協力してインフルエンザを撃退するのです。
これは趣味ですが、最初のほうで、インフルエンザが侵入したときに白血球が苦戦していると、萌え系お姉さんのマクロファージが来て、にっこりと鉈を振るって一撃で倒すあたり、ぞくぞくします。このとき、相手はA型であることもヘルパーT細胞に電話(抗原提示)します。非常に芸が細かいことに驚かされます。医学関係を志望している学生はたちまちイメージができあがることでしょう。因みに看護師である私の妻は、そもそも昔学習しているとき、頭の中にはこのように擬人化された細胞がうごめいていたと言いますから、大したものです。
さて、このようによくできたアニメなのですが、何かお感じになったでしょうか。クリスチャン、そしてキリスト教会は、キリストのからだだ、とパウロは熱心に主張しました。それぞれの役割は違うが、協力してキリストのからだを、あるいは徳を、建て上げるのだ、と。これら体の細胞たちは、それぞれに役割を与えられ、生体維持のため、また外敵駆除のために「はたらく」ことをしているのです。一部で戦えないときには助けを呼びます。全体にコールが鳴り響き、発汗や発熱といった対処で恢復へ向かうべく協力します。教会の姿に、実によく適合すると私は密かに感動しています。
さて、このような目的のために「はたらく」細胞であるでしょうか。それとも、ウィルスに感染してゾンビ化し暴れる細胞となり、退治されるべき存在であるでしょうか。私たちクリスチャンは、どうありたいものか、また次回もわくわくしながら録画の上で見ていきたいと楽しみにしています。