カーネーション
2018年5月13日
母の日は、教会学校の教師などを務めた母親の記念会に、娘がカーネーションの花を捧げたことが始まりだと伝えられています。いまではすっかり商売の道具となってしまった観がありますが、母の日のカーネーションは依然としてひとつの象徴であり続けています。
カーネーション(英:carnation)は、元来ピンク色、肉色だとして名づけられたと言われています。carnalの意味が「肉体の」で、その名詞形というわけですが、元来ラテン語で「(動物の)肉」を表すのが「caro」だったことに由来しています。carnisはその属格形(肉の)で、これがcarnalに続いているのではないでしょうか。そう言えばカーニバル(carnival)の意味は「謝肉祭」でした。
しかしこの語は動物の肉だけを表すものではなく、たとえばローマ皇帝のような立場の人物は、神の子だと称されていたわけですが、神が人となった、日本語なら「権化」というようなときに、Caro Dei と、「神の肉」というような言い方をしました。肉の形をとった、という意味です。
こうするとお察しのとおり、この語は、神が人となった、というキリスト教の思想にぴったり重なってきます。これをラテン語の博士たちが見逃すはずはありません。肉の中に神が宿る、というような考えのために、英語と同様な意味でのinを付け、incarnation という語を用いて神学を築きました。東方教会ではこれを「藉身(せきしん)」と称し、カトリックではかつては「託身(たくしん)」とも言いましたが、現在は一般に「受肉(じゅにく)」という語が使われています。
「インカーネーション」という響きだけ耳にすると、「カーネーション」の花とつながりがあるのかな、という気持ちになるかと思います。花そのものが関係があるわけではないのですが、言葉の上からは、関係があったということになるでしょうか。
母の日に、偶然的にこのカーネーションが用いられたことに、少しばかり含蓄深い思いを重ねてもよいのではないか、と思います。