『在宅看護師』
喜多悦子
築地書館
\1400+
2026.4.
表紙に文字が鏤められている。タイトルの下に「地域を支える看護の力」、タイトルの左に離れて大きな文字で、「待機の中で安心して暮らすための処方箋!」、そして下の方に幾らか小さな形で「独立開業した在宅看護師14人の実例掲載。」
地味な本なのだが、中身は熱い。というより、いま日本が抱えている、老後のケアの問題が隅々までしみ通っているような一冊である。
表紙の言葉からすると、在宅看護師になるノウハウが書かれているようであるが、深刻な医療現場のレポートのように受け止めてもよいかと思う。
ただ、在宅看護というものが本書の主題である。少子高齢化から総人口の減少によって、地域の衰退が進んでいる現状を把握しなければならない。高齢者が医療を利用することへのハードルが上がってゆくのである。医療従事者の減少が、私たちの医療機関受診の壁をも厚くしてしまうかもしれない。まだ綻び程度だと高を括っていると、現実になったときに一気にどうしようもない自体が蔓延しそうである。
本書は、グリーンをベースにし、黒インクの他には殆どグリーンでまとまっている。そして重要な命題には、ゴシック体を当て、さらにその下半分をグリーンのラインが彩っている。要点を披露には恰好の配慮だ。しかし、今後の日本の人口動態の予測など、冷静なデータもふんだんに取り入れて説明がなされるために、
視点はやがて、在宅看護という本書が最も示したい内容に移る。在宅看護とは何か。それは、医療の目的が「治す」ことから「支える」へと転じることでもある。それは、「新たな地域社会をつくる」という構想にまでつながる。そういう社会に変化してゆくことである。
変わるはずがない、とお思いだろうか。否、もう変わらざるをえないのである。社会構成も変わるし、経済要因も変わる。未来を支える子どもたちがいない。普通に考えて、これは完全に悲観すべき事態なのである。
しかし、そこに希望を見出す、というのが本書の眼差しである。いま現場はどうしているか。何を以て喜びと生き甲斐の明日を実現する道を拓くのか。
理想をただ語るのではない。いま何が始まっているのか。試行錯誤かもしれない。だが、様々な実例を共有することで、さらなる改善や発想が生まれることは大いに期待できる。地域での小さな組織だけがもがき、少しばかり貢献しても、やがて行き詰まり、消えてしまうことをただ繰り返してゆくのであったら、それこそ未来につながるものがない。成功も失敗も、情報を共有して、よいことを実現してゆくためのものとなり得るであろう。
こうして、表紙にあったように、全国各地の活動が紹介される。福岡県からも二箇所取り上げられていて、どうしてだか分からないが嬉しい。また、長崎の五島の話では、離島という厳しい情況が、否応なく伝わってくる。
これら実例を並べた後で、「カンタキ」について少しばかり説明が入る。「カンタキ」、それは「看護小規模多機能型居宅介護」のことである。通称は、その文字の一部を拾った「看多機」のことである。著者は、ここにひとつの光を見出している。もちろん、その問題点を把握している。しかし、問題点を理解しているが故に、そこからの可能性というものも見えてくることがあり得るであろう。
著者は、日本の看護職を支えてきた人である。ペシャワールでの経験もあることが、最後の語りの中で明かされていた。日本赤十字九州国際看護大学の学長も務めている。そして多くの表彰を受けていることからも、その考えは日本の大きな針路をつくることができるはずである。本書は、そのための力強い一歩であるに違いないと私は感じている。
終章で「生きる場所で最期まで」と題し、新しい共生社会への道を指し示した。「看護が社会を変える日を信じて」という言葉を表に出していた。「信じて」の話である。それは、「病院中心ではなく、地域の中で人が支え合い、看護が希望の橋となる社会」を見つめている。「「人と、その人の生活と地域との関係を知ること」がよりよい看護につながり、多数の人々の幸せな人生=well-beingに結びつくこと」を、著者は確信しているのだという。
そうして、看護職の方々にご理解いただきたいことを、かなり専門的な言葉を交えて述べており、力強く結ぶ。「看護師が地域を、社会を、日本を変える!」のです。

た
か
ぱ
ん
ワ
イ
ド