本

『お酒のおいしい選びかた』

ホンとの本

『お酒のおいしい選びかた』
JUNERAY
朝日新聞出版
\1800+
2026.5.

 サブタイトルに「ワイン・日本酒・ビールの超入門」と書かれている。それに加えて、蒸留酒とノンアルコールドリンクの章もある。蒸留酒のファンもいるだろうから、宣伝の上で少し損をしているかもしれない。
 著者は、「日本ソムリエ協会ワインエキスパート、SAKE DIPLOMA、クラフトビア・アソシエーション認定ビアテイスター」だと紹介されているから、この専門分野についてのみ看板をこしらえたのだろうと思う。
 まずは「お酒のおいしさの章」、そのあとワイン、日本酒、ビールと続き、先ほどの二つも続くのである。項目は、章の長さの長い順に並べられている。私は、すぐには全部読み尽くせなかった。やはり自分の理解できるところから読みたい。
 それにしても、この解説はとてもいい。呼びかけるような語りかけも親しみが湧くが、それにも増して、解説が分かりやすく、手順もいいのである。これぞ解説の極意、とでも言えばよいだろうか。黒のほかにはオレンジ色だけが使われているが、大切なタイトルや大事な命題、注意点などには、オレンジ色が使われていて太字になっているるし、その都度文字のポイント数も変えられている。
 本書には、表やイラストはふんだんに用いられているが、写真がひとつもない。
 お酒の紹介や入門書についてよくあるタイプは、こうだ。厚手の写真誌でつくられたムック本のようなタイプで、高級感を出す。写真がたっぷりだ。各地から取り寄せたのか、名だたる銘酒の写真が並んでいる。それには、麗しい解説というか、紹介が付せられている。それは、メーカー側の宣伝文句かもしれないし、いつかどこかで研究者やその道のプロが評したものを借用したのかもしれない。すべての酒をスタッフが実際に買ってきて味わい、適切な評を書いたとは、とても思えないのだ。失礼ながら。
 それが正しい評だったとしても、どれそれの酒はこうらしい、という知識は得ても、さて自分は何を選ぼうか、選ぶときにどういうところを見れば何か分かるのだろうか、といった点ではまず役立つことがない。いいものを見せて戴きました、程度で終わる。
 だが本書は違う。本書は、本当に酒というものに一歩近づくためにあるといい知識が、適切に花咲く道を歩ませてくれる。
 最初に酒についての諸注意だが、飲まなければ最もいい、というような健康上のこともきちんと示されており、いまから酒を勧めるからまあ酒は百薬の長だしね、といったような感じではない。冷静に酒と向き合っている様子が窺える。しかも、女性に求められる一日20gのアルコールが、それぞれの酒種で具体的にどのくらいの量なのか、といったところからイラストで見せられていて、心にも残る。
 ワインなら産地の特色からボトルの形の違いの意味、ラベルの用語の一つひとつの理解の仕方など、本当に実用的で、懇切丁寧である。
 日本酒なら、種別の製造法の違いはもちろん、やはりラベルの見方のレクチャーが、具体的に進められる。
 ビールだと、エールがどのように違うのか、私の知識では、温度を上げて飲むとよい、という程度だったのだが、温度を上げても味が落ちない、というのがより正しいということを初めて知った。
 蒸留酒は端折りながらではあるが、リキュールやカクテルについても、手際よく説明されている。
 そしてさらにうれしい特徴を言うなら、合う料理、何と食べるか、という実際的な解説がとてもよいのである。もちろんつまみのレシピを詳しく語るスペースまではないのだが、何故そのような料理に合うのか、という説明が実にうれしい。ジンがカレーに合うということとその理由についても、私はいままで知らなかったのだ。  私が見た、この種の案内の中では、ピカイチである。「決定版」と表紙の右上にあるのも、決してオーバーではない。しかし、今後改訂版が出たら、そこにどう書かれるのだろうか。いらぬお世話だが、ちょっと楽しみである。




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