本

『ネコとなかよくなろうよ』

ホンとの本

『ネコとなかよくなろうよ』
トミー・デ・パオラ
福本友美子訳
光村教育図書
\1300+
2020.11.

 名前からして、イタリア系ではないかと思ったが、父親がそうであったらしい。国籍はアメリカである。1034年生まれだというから、本書は80代後半で出た絵本らしい。絵本作家である。多くの絵本をつくり、沢山の受賞歴があり、功績が認められている。
 その絵は、センダックを思わせるとも言われているようだが、もっと温かい感じがする。
 本書は、確かに絵本ではあるが、物語ではない。言ってしまえば、ネコの絵本的図鑑であり、ネコの知識を与える本である。それでいて専門的になるわけでなく、子ども目線でネコについて多くの知識を得るためのものとなっている。それは、設定からして、パトリックという名の少年が、ネコをさしあげます、という看板を掲げたキララおばさんの家に入るところから、それが現れている。つまり、ネコを飼いたいな、と思った子どもに、ネコのことについて、簡単ではあるが指南するという絵本なのである。
 もちろん、それは大人は皆知っている、というようなものではない。大人も勉強になる。一つひとつのネコについての解説が、なかなかのボリュームがあるものだから、それを全部頭に入れるのは、大人でも難しいだろう。
 アメリカの絵本であるから、日本ネコについての知識に乏しいことは、とやかく言うまい。ジャパニーズボブテイルがわずかにひとつ、ささやかに紹介されているが、それはアメリカに渡ったタイプであり、尻尾が短いという特徴がある。私たち日本人が普通に馴染んでいるネコたちからすると、だいぶ違うな、という印象がある。
 エジプトでずいぶん昔からネコが愛されていたことは、よく知られている。だが、ネコにまつわるエジプト神話を紹介してくれる本は、殆ど見られない。本書には、太陽を魔物アペプから守ったネコの物語がイラスト入りで掲載されている。太陽神ラーがネコに姿を変えたのだそうだ。
 ヨーロッパ中世では魔女などの不穏な空気の中で、ネコも悪役にされ、殺されたのだという。しかし、ペストの流行で、ネズミを駆除するためにネコが重宝されたのだともいう。こうした歴史についても本書は触れている。日本でもネコが大切にされたのは、ネズミ絡みだという話がある。
 こうしたネコにまつわるエトセトラに加えて、実際にネコを飼うためのノウハウも、実はなかなか詳しく書いてある。子ども目線としては、これで十分ではないかとさえ思えた。それでこその絵本なのだろう。
 物語が終わった後、「ネコはかせになろうよ」と物知り知識のページがある。チーターはネコのように喉を鳴らすことができるが、ライオンやトラなどはできないのだという。へぇ、と感心する。オスのミケが殆どいないことはもちろん周知だが、サビネコもそうなのだということは、知らなかった。そうか、サビネコはミケネコと同じ種類なのだ。
 トイレットペーパーの芯でつくる、ネコのためのオモチャの作り方は、たいへん面白かった。こんど作ってみようと思った。




Takapan
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