本

『思い出のマーニー』

ホンとの本

『思い出のマーニー』
ジョーン・G・ロビンソン
松野正子訳
岩波書店
\1400+
2014.5.

 多くの版がある。さらに、ジブリの映画にまつわるものもある。私が購入したのは特装版である。巻末に、作者の長女によるあとがきと、河合隼雄氏の解説が加えられている。この解説は、本のための、というよりも児童文学について書かれた文章をここに掲載したというものである。実は本書を読もうと思い立ったのも、その河合隼雄氏の文章に基づくものだった。読みたくなった。
 ジブリの映画は観ていない。どうやら人物や場所を日本に設定し直したものらしい。
 親を事故で失ったアンナは、ナンシー・プレストンに引き取られるが、アンナは「おばちゃん」としか呼ばない。喘息を患っていることから、海辺のペグ夫妻の元で療養することになった。物語の舞台はその転地療養の場で起こる。
 美しい入江の情景と、そこに聳える「しめっ地やしき」。アンナはその建物に、なんともいえない親近感を覚える。時々ワンタメニーという老人に、ボートの乗せてもらい、そこへの生き方を知る。登場回は少ないが、この老人、とてもいい味を出している。河合隼雄氏か最後に付け加えた通りだ。
 アンナは、誰もいないと聞いているその「しめっ地やしき」に、女の子がいることを知る。その子と話をするようになり、すっかり友だちになる。それがマーニーだった。
 アンナは、ミセス・プレストンのことは好きだったが、アンナを預かることで報酬を得ているという話を聞いて、大人社会に疑問をもつようになっていた。どうして自分を遺して死んでしまったのか、と親にも疑問をもっていたが、アンナについて特筆すべきことは、これくらいのことである。特別な才能や、変わった性格などをもっているわけではない。その「普通さ」が、物語の特色であるとも言える。だからまた、とても地味なのであるが、それがこの物語の華であるような気がする。もちろん、孤児という特別な背景はあるが、アンナの性格や行動は、少しばかり一途で真っ直ぐであるということの他に、取り立てて変わったところはないように見える。だから、初めてできたようなこの親友との関係は、アンナにとって特別だった。
 ところがこのマーニーのことについては、読者は間もなく気づき始める。何かおかしい、と。他の村人たちは、あの「しめっ地やしき」に人がいるはずがない、と言う。また、マーニーの現れや消え方が、何か普通でない。これはもしかすると、アンナの単なる幻想なのではないか、とすら思う読者がいても不思議ではない。
 どうやらこれは、ミステリーのようである。気づき始めたら、謎解きをしたくなってくる。後半では、その「しめっ地やしき」に、本当に人が集まる。また、そのときにマーニーとの別れがあった。そして、そこからじわりじわりと、結末へと進み始める。
 もちろん、決定的なことと、それにつながる出来事などに、ここで触れることはできない。謎は謎として残ることにはなるが、妙に理性的に解決することを求めさえしなければ、これはとても豊かな心を以て読み終えることのできる、温かなファンタジーである。愛に満ちた物語であるし、読後感がとてもいい。出会えてよかった。




Takapan
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