『SNSって面白いの? 何が便利で、何が怖いのか』
草野真一
講談社ブルーバックス
\900+
2015.7.
いまさら、という声もあろうが、私はありがたかった。ミクシィの勢いはどうなったか知らないが、たぶんTwitterとFacebookがあまりに普通の出来事となっている現状の中で、SNSってなあに、とくるわけだから、使っている人にとり、興味の向かない本となっているのかもしれない。
だが、これはその操作方法や特徴の宣伝などではない。そんなものは、少しも記されていない。それよりも、SNSの実情とその背後、からくりといったものを、存分に記している点が特徴的である。また、使っている側も知らないことが多いのではないかと思う。
そもそも、運営している企業は、どうやって利益を得ているのか。的確に答えられるだろうか。そして私たちはこれを利用しながら、どこを歩いているのだろうか。これまでどこを歩いてきて、これからどこへ向かおうとしているのだろうか。便利だとか面白いだとか言っているだけでは、単純に乗せられていることになるかもしれないし、利用されているだけかもしれない。どんなしくみで動いており、そこにどんな危険があるのか、それをノウハウではなくて原理的に知るという営みは、実は大切なのではないかと思う。科学は便利、科学万歳、平気で何でも使っちゃえ、という文明が如何に危険なところに向かってきたのか、その歴史の悪しき部分を再現する必要はない。私たちは、SNSの利用により、何かが変えられているのだ。だから、いくらか哲学的な視点が必要であるのだ。
著者は、SNSの展開により、私たちはひとりひとりが実は権力を握り始めたという。私はただつぶやいただけ、「いいね!」を押しただけ、そうした事柄ではない時代に突入しているのであり、そこに参与しているのだ。あまりにも責任感の見られないような行為であると思われるかもしれないが、そんなことはない。現に、このネットワークの故に、他国では革命すら起こっているのである。そういう力あるものに自分は軽く指一本で加わっているのだ。
また、人と人とのつながりがこれでしかできないようなあり方でよいのかどうか、そんなところも当然考えさせられる。電車の中でスマホで他人とつながっていながら、目の前にいる人に迷惑をかけていることにも気づかない、気づこうともしないという日常で、私たちは何かが変わってしまってきているのである。スマホをしながら歩くことが平気でできるようになっている、しかもそこにおかしさを感じさせず、むしろいいじゃないかというような態度で誰しもがやっているような現状に、ひずみを感じないといれば、危険ではないか。
いや、著者は、もっとこのネットワークそのもののもつ問題を適切に扱っている。ああ、こういう構造になっているのだ、こういう目的があるのだ、そんな視点も与えてくれる。今のめりこんでいる人も、これからやってみたい人も、これからスマホを入手しようという人も、知っておかなければならないことばかりが述べられている。2015年現在の状況がよく説明されている。今手に取るに相応しい一冊であるだろう。