◆通知表の盗難

 福岡近郊の某小学校の小学一年生の担任教諭が、商業施設に駐車していた車から、デジカメなどを盗まれた。3月の学期末のことである。
 車には、通知表をはじめ、家庭調査書関係のノートが一緒に置かれていた。それで、それらの書類もすべて失われた。
 きわめて高度の機密性をもつべき個人情報である。当該児童の一人が、私の教会学校で担当している子とあって、私の憤りはいや増すものであったが、当の保護者の怒りや不安の割には、大問題とは扱われなかった。多分に、「よくあること」だからである。
 教頭は「児童らの個人情報が入った資料は、学校外に持ち出さないように全職員にあらためて指導した」と話している旨、報道されていた。だが、私はこの言葉に怒る。こういうありきたりのその場かぎりの言葉を、私たちは聞き逃してはならないと思う。そこに、事件の「根」があるのだ。
 もちろん、盗んだ者が最も悪い。しかし、セキュリティ意識を欠く行動はもはや責任を免れる理由とはならない。非難され、叱責を受けたであろうこの教諭に問題があることはもちろんである。だが、おそらく、報道されないものも含めると、無数の同様の事件が起こっていると類推してよいと考えられるのだ。こうした事件が後を絶たないのは何故か。
 教諭が通知表などを持ち帰ったのは、金曜日である。最後の土日を利用して通知表を作成しなければならなかったのである。これは、たんに教諭の作業が鈍かったからであろうか。推測に過ぎないが、家に持ち帰らなければ、仕事が終わらなかった、それほど学校では他の業務に追われ、忙しい――そう考えるほうが自然であろう。
 教頭のコメントは、あまりにも他人事である。このような言葉が出てくるようでは、教頭自身は何も責任を感じていない、と言われても仕方がない。教頭は、こうコメントすればよかったのだ。「学校外に持ち出さなくて済むような労働環境をととのえたい」と。つまり、通知表は家に持ち帰らなくても学校の勤務時間に全部作成できるような労働環境を私がつくります、と宣言しなければならないのだ。
 これをしなければ、必ずまた同類の事件が起こる。なにしろ、校外に持ち出さなければ、(学校内に成績表を盗みに侵入することを除けば)起こるはずのないことなのであるから、これは簡単に防ぐ方法があるのである。そのことに、なぜ気づこうとしないのか、もっと保護者は怒らなければならない。


なお、興味深い現場の声があったので、リンクしておきます。

「通知表を盗まれた教員だけが処分されるの?!」
『先生、盗難にご注意!!』
神奈川県教育委員会が公開した事故報告書 [必見!]



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