◆ちゅうりっぷになりたかった

 NHK教育テレビで朝晩放映中の『おかあさんといっしょ』。人気の幼児番組だ。タイトルとは異なり、多分に、お母さんが何かの幼児をするために、子どもに見せておくというケースが多いのではないかと思う。
 スタジオの子どもたちは、オーディションで選抜された、一応のプロとして出演しているらしいが、子どもたちが囲んだ中でおにいさんとおねえさんが歌うコーナーがある。 「大きくなったら○○ちゃんはね、△△△になるんだってさ。きめた、きめた、△△△。もうゼッタイ、きめた」という歌のときには、子どもに実際に質問して、それを歌にする。お名前を尋ね、何になりたいかと訊く。
 その女の子は、大きくなったら何になりたい、と訊かれて、「ちゅうりっぷ」と答えた。おねえさんは、すかさず、「ああ、お花屋さんね」と訂正し、すぐに歌に入った。「きめた、きめた、お花屋さん。もうゼッタイ、きめた」
 これを見て、ひさぱんはたいそう悲しんだ。「ちがう。あの子は、『ちゅうりっぷ』になりたいと言ったの」
 子どもは、おとなの理性や知識の枠に縛られた発想をしないことがある。私もひさぱんの言う通りだと思う。あの女の子は、「ちゅうりっぷ」になりたかったのであって、「お花屋さん」になりたいなどと、ゼッタイ思っていなかったのだ。
 歌として、大きくなったらちゅうりっぷになる、という歌詞を、自分が歌うことをためらったために、番組としてはよい出来になったかもしれないが、子どもの思惑とは別のものになってしまった。
 テレビ番組に教育を求めても仕方がないが、教育の現場でもこうしたことはありうるような気がしてならない。こういうことが学校で行われてはならないと切に願う。
つぶやきの カ・ケ・ラ


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