◆祖国愛と愛国心 国語の授業を担当していると、毎時間学年ごとに、二つほどの文章に出会うことになる。それだけ予習が実は大変なのであるが、そのとき、味わいのある文章に出会うと、よい機会に恵まれたと感謝する。 その筆者は、「祖国愛」は必要だが、「愛国心」には警戒しなければならないという意味のことを記していた。 そもそも、「祖国とは国語である」という命題から入り、それを展開している内容であったので、祖国を愛するという言葉遣いは肯定しながらも、政治的なスローガンである「愛国心」には問題がある、とするのであった。 その違いはたとえば、オーケストラのパートが、それぞれ異なりながら全体として強調し調和していくように、祖国というものは国語を支えとして、それぞれに異なる様相でありながら、互いに他と調和していくものだという視点に対して、国を愛せよと迫るやり方は、自国の利益しか想定しないあり方なのだ、というわけである。後者は、政治家の仕事として必要な部分をもちながら、国際社会の中で真に必要なものは、それではなく、「祖国愛」のほうだと結論づけられていた。 この違いの意識は、重要なものだと感心した。 愛国心のない者はその国の恩恵を受ける資格がないから出て行け、という論を振りまく人がいる。私たちは、そんな声に惑わされてはならない。 私は、祖国を愛するが、たとえば中国や朝鮮を小馬鹿にしつつ愛国心を強要する人々とは、歩調を合わせたくないと考えている。 |