◆タバコと公務

 給料を銀行からおろすためにATMのある役所に行った。家族の者がおろしに行っている間に、残された私はと3歳の息子は、車の中で待つことにした。車は駐車場にとめていた。
 暑いので、車のドアを少しだけ開けて、子どもに、借りたスヌーピーの絵本を読んでいた。となりの駐車スペースに差し支えるような開け方ではなかった。
 タバコの煙が車内に流れ込んできたと思って、見渡すと、駐車場整理係が、タバコを片手に車に指図している。たまらずドアを閉めた。ドアを閉めたところで、外気は全く入らないわけではないから、実に気分の悪いひとときであった。
 間もなくその係員、私の目の前に来て、車をもっと後ろに下げろと命じてきた。特別出っ張っているわけではない。ぎりぎりまで下がれというのだが、事実上迷惑になっているようには思えないし、もし迷惑になっているとすれば、それは構造上の問題である。もし下がれと命じられて下がったところ後ろの壁にでも当たったところで、係員が責任を取るはずはない。
 家族の者も行ってずいぶん経っているから、もうすぐ戻ってきそうだった。エンジンを一度かけてバックして、また止めるというのは、できるならやりたくないことだ。嫌になりそのスペース出た。そして、ATMの横に車をつけた。駐車場の出口に近いので、幾らか邪魔であることは認識していた。ただ、そこには役所に用のある大きなトラックも駐車していたので、その陰にとめた恰好に過ぎなかった。
 このトラックと共に、出入り口付近は狭くなっていたため、すぐさまあのタバコの係員が来た。車の出入りに支障が出るから、どいてくれと言う。
 係員の反応は、予測できた。それをわざとやった私にも非はある。だが、タバコの煙を避けるために、ここに逃れてきたのでもあった。
 ドアを少し開けて、私はたまらず、吠えた。タバコをやめてください。
 係員は、逆ギレした私に驚いて下がり、地面のアスファルトにタバコをこすり、吸い殻を棄てた。なぜ私が吠えたのは、理由はたぶん分からないだろう。
 道路工事の誘導なども、お仕事としては大変だろうと思う。しかし、タバコをふかしてやる仕事ではない。この役所の近くで交通整理をする係員は、ほかのケースでも、しばしばタバコをくわえながらやっている。
 最近、福岡では子ども3人が飲酒運転の公務員により殺されるという悲しい事件があった(私は事故と呼ばない。事故という言葉には偶然性が伴っている)。そのため、飲酒運転が大いに問題になっている。だが、タバコの煙は直接的に人の命を奪う現象を見せつけるものではないため、真剣に問題にされることがない。
 その役所でも、建物の中は、健康増進法のために禁煙です、と、決まりを守っているアピールがなされているが、入口の外に吸い殻入れがあって、そこにスモーカーが立ち並んで煙をもうもうとさせている。職員も吸っている。入口こそ、煙があってはならない場所であるということは、誰も何も考えていない。
つぶやきの カ・ケ・ラ


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