◆死んで初めてでなく 作詞家が亡くなった。長寿であった。 マスコミは、古き良きその方の手による唱歌を懐かしんだ。新聞のコラムもまた、盛んにその時代の歌詞のすばらしさを称えた。 そんなにすばらしい歌詞であるなら、作詞家の存命中に、もっと褒めていたらいいのに、と思った。 かつての時代を置き去りにして、新しい時代の呼び声にこそ金が得られると息巻き、唱歌になど目もくれない人々が、ひとたび作詞家が亡くなれば、ふと思い出して、称える。 死者を鞭打たずという考え方の習慣がある。しかし、生者を褒めるという考えは、ないのかもしれない。 存命中にこそ、その人を評価することに、どうして思いが及ばないのだろうか、と思う。自戒を込めて。 |