◆野球を愛する思いから

 地元ラジオ局の野球中継は、地元球団を応援している。それはそれでいい。
 福岡で言えば、RKBとKBCは、ホークス戦を中継するし、それもホークスを応援するという形でアナウンサーも解説者も話している。まして、野次馬応援席みたいなタレントの大騒ぎは、もうホークス一色のコバンザメである。
 ひさぱんは、福岡に来るまで、とんと野球を知らなかった。子育てが一段落したとき、ホークスが強くなってきたことで、野球を覗いてみた。そして、その面白さに惹かれた。
 野球についての知識を、私にも問い尋ねるが、生憎私は夜は仕事中である。ひさぱんは、野球中継の解説者の話に耳を傾けた。それで野球を覚えていった。そのため、実に玄人っぽい理解の仕方をしている。「さしこまれた」「およがされた」なども熟知しているし、一回の投球をラジオで「聞いた」だけで、その投手の今日の調子を言い当てることができるようになった。
 ひさぱんは、自分では二人の解説がよかったと覚えている。落合さんと平光さんだ。
 この二人は、どちらかのチームの贔屓をするというのではなく、野球というものを公平に客観的に、そして目の前に見えていない部分から丁寧に分かるように話してくれたのだという。
 地元ラジオ局の野球中継では、相手チームが勝った場合、ヒーローインタビューさえ放送せず、早々に放送を打ち切ってしまう。あるいは、相手チームのインタビューが背景に聞こえる中で、アナウンサーがこの試合のことや今後のことをうるさく話して聞かせる。
 この試合のことや今後のことを気にするなら、今日の試合の活躍者の声は、聞きたいではないか。その中に、こちらの何がよくなかったのか、のヒントもあるかもしれない。
 ホークスの城島捕手は、日本シリーズあるいはプレーオフで負けた後、相手チームの歓喜の様を、独りペンチに座って睨み続けていた。その悔しさを胸に刻むためでもあるし、どうすればよかったのかを一番真剣に考える時でもあるからではないかと思う。受験生が、成績の悪いテストを返されたときのように。
 野球というものを愛するなら、相手チームのことも知りたい。素晴らしいプレイには表敬したい。相手チームであれ、スタンディング・オベーションも辞さない。相手チームあってこその、リーグであり、我がチームである。野球界である。
 ひさぱんは、ホークス一辺倒でありながら、実に良い野球観を、優れた解説者に育ててもらった。あの日本シリーズで、下品なヤジを垂れ続け、かつてないほどに福岡ドームのスタンドを散らかして帰った阪神ファンとは対極的な野球への愛情を抱いたことは、ひさぱんにとって幸せであったと思う。いや、ホークスファンも、皆が上品であるとは限らない。
 福岡のラジオ局の中継も、どうか相手チームのインタビューくらい、放送してはくれないだろうか。
つぶやきの カ・ケ・ラ


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