◆命はくり返せない 2005年2月14日、痛ましい事件がまた起きた。寝屋川の小学校に入った17歳の少年が学校職員を殺傷した。学校の安全の論議がまた活発になる。 基本的に公共の施設では防ぎようがない一面がある。市民の来訪を拒むことができないからである。もちろん、だからといって無策でよいはずはなく、対応策は役立つものと信じて動きたい。小さなことでも。 新聞もそれぞれ論ずる必要があった。その中で、朝日新聞の天声人語が16日、一編の詩を引いた。谷川俊太郎さんの詞華集「はるかな国からやってきた」(童話屋)から、「くり返す」という詩である。 過ちに対する後悔はくり返すことができる。しかし、人の命をくり返すことはできない。そういう叫びを、詩人としての素晴らしい言葉で編んである。その詩は「命はくり返せないとくり返さねばならない」と結ぶ。 詩人の言葉は、人の心に刺さる。 この詩は、二年前の同じ2月、27日の毎日新聞の余録でも取り上げられている。ちょうどその頃にこの詩が発表されたようだ。 事件は、桶川市で21歳の女子大生、猪野詩織さんが殺されたもの。そのさいたま地裁の判決を受けての余録であった。 谷川さんは、何も殺人事件のためにこの詩を書いたのではないだろうと思う。だから、たとえこんな理不尽な殺人事件が世の中から消えたとしても、世界に大きく広げた傘の中に、この詩を掲げて見つめ続けていたい気がする。 子どもを守って亡くなったといえる先生の後ろ姿に、私がかけられる声は、その程度でしかないのが、たまらなく悲しい。 |