◆ほんもの

 これは、ほんもののクリスマスのお話です。
 絵本の読み聞かせの教室で、クリスマス物語の絵本を取り上げたとき、私はなにげなくそう口にした。
 そのとき、言葉にできない視線と心の電波を、私は感じた。四年生の子どもたちは、その言葉にハッと反応した。
「ほんもの」
 そもそも、クリスマスが何であるのか、子どもたちは知らない。だが、バンダイのアンケートによると、子どもたちの6割近くが、一年中で一番楽しみにしている行事が、クリスマスなのである。それが何であるのか知らずに、プレゼントがもらえることを楽しみにしていた子どもたちが、「ほんもの」の一言に、反応した。
 子どもたちは、ほんものを求めていた。ほんものがあるなら、やっぱりほんものの方がいい、と分かっていた。
 はたして私たち大人は、こうした子どもたちの求めに、応えていると言えるだろうか。「ほんもの」を示していると言えるだろうか。
 ほんとはそうしなきゃいけないんだけどね、なかなかできなくってさ――そんな言葉を、平然と使ってはいないだろうか。
 大人たちが「ほんもの」を示す責任があるとすれば、大人たち自身、「ほんもの」の生き方を始めなければならない。
つぶやきの カ・ケ・ラ


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