◆自動ドアに慣らされて 部屋に入れば後ろを向いて、ドアを閉めてから中へ進む。基本的な作法である。ごく当たり前の行為だと思われていた。 しかし、教室の子どもたちを見ていると、大方が、開けたドアを閉めようとしない。偶々閉めようとした子も、後ろを見ずに閉めるので、たいそう危険である。 たしかに自動ドアは便利だ。からだに不自由のある方にとっては実に助かるものに違いない。しかし、たとえば開閉式のドアの前でじっと立って、いつまで開かないんだ、という顔をしている人が時々いる。私も経験がある。 が、さすがに世の中のすべてのドアが自動ドアであるわけではないので、私たちも手でドアを開ける術は知っている。しかし、自動ドアでなくても、開いたドアはしばしば自力で元に戻り、閉まることが多い。 かくして私たちは、ドアを閉めなくなった。 楽にするため、便利だろうと、発明がなされ、開発され、商売となる。だが、それが人間を楽にしたと言えるのかどうか、どうも分からない。 たとえば、衝突を回避する車のシステムが、ほんとうに事故を減らすと言えるのか、私には分からない。よけい大胆になり油断するのではないかと危惧する。自動ドアの例と同じである。 |