◆ユダの福音書を信じさせたい まさかこんなことを大きな新聞が、報道としてでなく、意見として主張することはあるまい、などと思っていたが、産経抄が2006年4月9日に書いた。いや、キリスト教に常々反感をもっているよいに見える新聞である。「飛びついた」と言ったほうが適切であろう。「ユダの福音書」の内容を発表したニュースである。 たしかにそのコラムは、「それが真実だと言い張った覚えはない」と弁明できるような書き方をしているかもしれない。が、その事柄に知識のない読者は、「なんだ、キリスト教は嘘だったのだ」と信じるような――そう誘導するような――書き方をしている。「キリスト教がすぐに受け入れるとは思えないが、妙に生々しい新説である」などと。 堀江元社長の偽メール騒ぎは、何の教訓にもなっていないらしい。永田氏は、ただ無邪気にそれを信じたに過ぎないが、産経抄の場合は、巧妙にそれを人々に信じさせようとしている点が、より悪質である。 しかも、このニュースを前提として、民主党の話にもっていくのだから、前提が真実であることが読者の心に植え付けられる。レトリックの基本である。なおさら、隠れた意図が窺えており、悪意が明確である。 |