イスラム教と四年生
2001年10月20日


 塾で、四年生には国語を教えています。授業内容とは脈絡がないのですが、やんちゃな子どもが、何か相手を悪く言うのに、おまえはイスラム教か、みたいなことを口にしました。
 たかぱんは、瞬時に、その言葉を止めました。
 子どもたちは、ただ耳でニュースにおいて、イスラム教という単語をよく聞いています。よく意味は分からないけれど、怖い宗教で、悪い宗教だ、というイメージで捉えられているように思えます。
 たかぱんは、イスラム教は、りっぱな宗教だと話しました。
「イスラムの人たちは、ただ一人の神の前に、忠実に従おうとします。それに比べると、日本人のほうがいいかげんじゃないかな。神社にお宮参りに行き、教会で結婚式を挙げ、お寺で葬式を出す。イスラムの人たちは、毎日を神さまの前にささげて、規律正しい生活を送ろうと努力しています。」
 子どもたちは、よく耳を傾けて聞いていました。
 そのとき、物知りさんがいて、口を挟みます。
「イスラム教の人は、豚肉を食べないんでしょう? どうしてですか?」
「よく知っているね。」と、たかぱんは目を細めてその子をほめます。「それは、きまりでそのようになっているからだよ。神さまが食べてはいけないと言われるんだそうだ。」
「なんで食べないのかなあ。」
 子どもたちは、不思議がります。自分はおいしいと思うのに、どうしてそれを食べないんだろう、という気持ちから、四年生くらいはまだ離れることができません。
「じゃあ、あなたは犬の肉を食べますか?」
「いやだあ。」とその子はいやあな顔をしました。
「それと同じです。」
 すると、「そうかあ。」とすぐに納得してくれました。


 教室の真ん中辺りで、女の子がこそこそ話しています。
「先生。この子、イスラム教です。」
 そこにいたのは、黒人の女の子。日本で暮らしていて、日本語をたいへん上手に使うし、漢字もいつもきれいな字で書いているのですが、明らかに顔は黒人。とてもきれいな顔をした子です。
「そう……ああ、そうなんだね。」
 彼女はにこにこ微笑んでいました。
 たかぱんは、心の中で、イスラム教のことを悪く言わなくてよかった、とほっと胸をなで下ろしていました。
 それからすぐ、教科書の内容に入りましたが、短い時間ながら、たかぱんは少しちゃんとした話ができたかもしれない、と思いました。


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