本

『今、絶滅の恐れがある水辺の生き物たち』

ホンとの本

『今、絶滅の恐れがある水辺の生き物たち』
内山りゅう編写真・市川憲平ほか解説
山と渓谷社
\2520
2007.6

 関連書籍が紹介されているが、その4冊のうち3冊まで読んでいる、しかもそのうち2冊は購入までしているとなると、立派なファンなのだろうか。私はこの手の本を、手にとるらしい。
 この本は、絶滅危惧種の中から、六つに絞ってレポートがしてある。タガメ・ゲンゴロウ・マルタニシ・トノサマガエル・ニホンイシガメ・メダカである。絞ったことで、彼らの生態やその抱える問題点などが、詳しく知らされることになった。よい企画方針であったと思う。これが、危ない生物を列挙したところで、「ひどいことだね」で終わったことだろう。しかし、ひとつひとつの生態を詳しく知ることによって、私たちは親近感を覚えた。読み進むにつれて、彼らと友だちであるような気がしてきた。しかも、その友だちさえ守ればよいということでもないことに、気づかされていく。その周辺の生態系、あるいは環境といったものを、どうすれば支えられるのか、考えさせられていくのである。
 タガメのメスの怖さも初めて知った。トノサマガエルは、この福岡県で絶滅がとくに懸念されているということに、驚いた。たしかに、見ない。いつか、甘木の駐車場で見つけて、捕まえたことがあった。掌の中で、トノサマガエルは、捕らえられてもなお威厳を呈していた。それは、人の手が熱すぎるから耐えていただけかもしれないが、確かにあのとき、「珍しい」と思った。聞けば、塾で教えているある生徒の家の近くにはいるという。随分な山の中から遠く通っている生徒である。福岡県にも、まだいるらしいと聞いて安心した。
 メダカ・ショックが1999年であった。当時環境庁のレッドリストに載り、世間があっと驚いた。あのメダカが、実は絶滅寸前であるとは、誰もが信じられない思いでいたようだ。
 たしかに、私の子どものころはいた。だが、今は自然の中で見つけられないようだ。農家の方々は、また違うかもしれない。
 私の子も、カタツムリを知らないというので、京都で苦労して人に探して戴いたことがある。嵐山で捕まえてきてくださったものを、十匹あまりをしばらく飼っていた。今住む地域では、カタツムリは田圃の害虫だからと、踏みつぶされている。
 用水路などを、コンクリート壁にするだけで、生物は絶滅への途をたどることになる。それでは住めないからだ。その辺りの側溝にも、たくさんのミミズが干からびていないだろうか。
 生き物への、いとおしさというものが、わき上がってくるような本である。写真も実にきれいで、貴重なシーンだと思うし、ただ見ているだけでも、元気が出て来るような写真となっている。しかし、彼らは絶滅へのカウントダウンを強いられている。それは、私たち人類の姿でもあるというふうに、自覚しなければならないことであるのだ。
 企画といい、仕上がりといい、実によい本だ。ぜひ、ご覧ください。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります