本

『ことばの由来』

ホンとの本

『ことばの由来』
堀井令以知
岩波新書941
\735
2005.3

 日常使う言葉の由来について、エッセイ風に、気軽に読めるように配慮された本。肩の凝らない内容で、どなたでも興味深く読み進めることができるだろう。
 得るところが大きい。私は読み始めて、間もなく後悔した。教会学校のお話をした後だったので、お話をする前にこの本を読んでいたら良かったのに、と。
 ぶどう園の労働者の話であった。そしてこの本で、「当たり前」という項目があった。この語は「当然」から来ている。江戸時代には「当前」とも書いた。同じ読みである。「共同で仕事をして得た収穫を分配するときに、一人分の受け取る分け前のことがアタリマエであった。……その分け前を受け取ることは道理に適い当然の権利であった。そこから、ごく普通のありふれたことをいうようになった」とあった。
 そうなんだ。ぶどう園の労働者のたとえは、「当たり前」の話だったのだ、と膝を打った。
 気軽に読めて、それでいて読みながら、「ああ」とか「おお」とか感嘆が漏れてくる、そんな本である。慣用句については自分の鞭をほとほと感じるものだし、まして日常語の由来については、「ああ、だから……」と納得することしきりであった。
 最後に、ことばの「索引」まで備えられているから、ちょっと気になる言葉をすぐに調べることができる点も、お勧めできる一因となっていることを付け加えたい。




Takapan
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