本

『マンガで読む 有機野菜の食べ方100』

ホンとの本

『マンガで読む 有機野菜の食べ方100』
魚柄仁之助
マンガ・野口弓子
飛鳥新社
\1,575
2004.3

 これほどまでに心をこめて作られた本を、私は見たことがないかもしれない。
 有機野菜が良いとか悪いとかいった、思想的なものと現実的なところとを混同した議論とも違う。有機野菜を腐らすのはどうかしている。問題は、それを無駄にせず使い切ること、つまり一度買った野菜をどうやって無駄なく使いこなすか。現実に、買ってきた野菜を余すところなく使い、しかも毎日同じ料理というわけにはゆかないものだから、どうやって手を変え品を変え、なおかつ同じ野菜を使い続けることができるか、というわけである。
 少女マンガの描き手により、軽妙なストーリーに仕立て上げつつ、「お気楽亭」の物語が展開する。料理のレシピと的確な技術が味付けされて、一話毎に写真入りでその料理の紹介もなされる。
 あとがきではっきり分かった。ここに紹介されている数多い料理が、現実にすべてスタッフの前で作られてマンガ家もまたそこにおり、その取材を基に描かれているということだったのだ。
 驚きである。
 そもそもこのマンガの舞台となる店がすごい。一日一品しか作らない。その週一週間は、ある野菜がテーマと決まっている。その代わり五日間メニューとしては異なる。つまり同じ料理はその一日しか作らない。そして、同じ野菜を五日間厭きさせずに客に提供するというのである。
 それは作者か言うように「仮想食堂」であるだろう。だが、何だかほんとうに家の近くにあるかもしれない、という思いを抱くのは、私だけだろうか。
 我が家で料理をしてくれる人の心は、きっとこのマンガの主人公といえる春彦くんのようなものなのだろう。あまりに日常過ぎて改めて気づかないような、この家族の料理というものが、極めて愛おしいものに思われてきてならない。
「作ってあげる相手のいること」がいかに大切なことか、また幸福なことか――あとがきには、このような言葉もある。
 この本のもつ、言葉に説明できない不思議な温かさや優しさといったものを解く鍵が、ここにあるような気もする。
 気軽にマンガとして読んで戴いて結構だろうと思う。だが、読後感はきっと、幸せな思いに満たされるこどたろうと思う。




Takapan
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