本

『超要約で世界の哲学を読む』

ホンとの本

『超要約で世界の哲学を読む』
鷲田小彌太
PHP研究所
\1575
2004.11

 日本文学でも世界の名著でも、そのダイジェスト版を出版する動きが目立っている。多くの人が気にはしていながら、それらをつぶさに読んでいくことがほとんど不可能な現状で、なんとかそのエッセンスだけでも知ることはできないか、というニーズに応えたものだろうと思う。
 実際、そうしたつまみ食い本は、けっこう面白い。その分野の裾野を開拓しようとするには、もってこいの方法だ。
 もちろん、それだけで終わってはいかにも薄っぺらい。それだけで分かったような気になってもいけない。その弁えも重要である。
 ここで、哲学書のダイジェスト版が出た。編集者というよりも著者そのものだが、信頼のおける人であるから、内容的に疑問を差し挟むことはないと思う。
 哲学と言うから、いかにも専門用語の羅列があって、分かりやすいことをもわざと分かりにくくしているのではないかと陰口をたたかれるくらいのものゆえに、どんなものかと思って覗いてみられたらよい。なんともはや、私たちが人生から学ぶあたりまえのようなことが、平易な言葉で説明してあるではないか。とくに、古代ギリシア哲学については、ふつうの言葉でふつうに人々が考えるような事柄について論じてあるだけに、きっと誰でも普通に読める範疇にある。
 問題は、近代以後である。カント以来、大学教授としての哲学者が増えるにつれ、そのカント並びにヘーゲルによる悪文の限りを尽くした記述により、用語は一気に難解になる。
 ここには、一般の西洋哲学史の範囲に限らず、日本の書物からも取り上げられており、広い見地から哲学ということについて考えることができそうである。
 なお、最初の「手引き」の3頁は、必ずお読み戴きたい。中身を読まなくても、ここだけでも読む意味がある。




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