本

『幼児期』

ホンとの本

『幼児期』
岡本夏木
岩波新書949
\777
2005.5

 いい本だった。「子どもは世界をどうつかむか」という副題があるのでなおさら、幼児教育専門の人のための本のように見えるが、そうではないと思う。『人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』という本が有名であるが、幼児期には、たしかに大切なルールが貫かれている。
 その幼児の成長を、「しつけ」「遊び」「表現」「ことば」の四つの相から語り続ける。子どもにとり、大切なものが、幼児期にいかに養われていくか、が熱く論じられている。それは、幼児虐待のことを正面から取り上げたわけではないが、それの影響の怖さを十分に伝えてくれる説得力をもつものである。
 私には極めて分かりやすかった。私が常日頃考えていることを言語化してくれたと思うこともしばしばであった。これは、発達心理学の立場から、子どもの成長を見守る中で、様々に思うことも含ませて、読者に幼児の世界を丁寧に伝えてくれる本である。
 かつての遊びを単に復元するとかでなく、大人が管理して遊ばせるシステム自体を反省しなければ、子どもの力は育たない、とする意見には、ちょうどその日に私がその意見をアップロードしていただけに、拍手を贈った。110頁からの僅かな行数ではあるが、この姿勢は本書の各地に響いている。
 また、201頁からの「誠実」についての議論は、これほどに誠実ということについて分かりやすく伝える文章があっただろうか、と感動した。
 特に今、私が二歳の幼児と格闘する毎日であることから、この本の教えることが、真実であると納得する点が多い。偉そうな理論ばかりの本は御免だ。育てる者の痛みを理解し、子どものすばらしさを淡々と伝えるこの本には、すべての親に頭に置いてほしいことが沢山詰まっている。
 教会の教会学校の教師などにも、ぜひ読んで戴きたいと思った。




Takapan
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