『西洋哲学史 古代から中世へ』
熊野純彦
岩波新書1007
\861
2006.4
いつのまにか岩波新書も新赤版が1000点を超えていた。かつての赤から、青、黄、そして新赤と1000を区切りに変化してきて、きて次は何色かと思っていたが、表紙のデザインを替えたものの、赤で1000を突破していくことになったようだ。
さて、通史としての哲学史を新書で行う技量もさることながら、そこに原点からの引用という義務を負い、また独自の観点から、見慣れた哲学者たちの名前を、象徴的な言葉の許にグループ化していくなど、読みやすさや見映えのよさも抜群である。教科書的な説明に終わらず、思想の流れをたどることをやめない、大胆な取り上げ方となっているところも、いい。
まえがきには、三つのポイントが掲げられている。
まず、私たちが追体験できるようにし向けていること、その哲学者の思考の流れを明らかに示すこと、哲学者本人の言葉で息づかいを伝えること、そんな感じである。
こういう、ポリシーのはっきりした本は、読みやすい。それを示してあれば、なお読みやすい。私たちは、ある種の先入観をしっかりもって、本の流れにとけこむことができる。どこへ連れて行かれるのか分からない不安な旅ではない。
プラトンやアリストテレスから急にアウグスティヌスに飛ぶような構成でなく、幾多の哲学者たちを的確に紹介しながら、思想の継承を見守っていく。
最新の研究やその傾向も交えながら、いつのまにか心地よく本の中に入っていくことができた。2006年秋には、近代以降の続巻が出されるという。カントの項目では、理性の深淵へ、連れて行っていただこうかと思う。

た
か
ぱ
ん
ワ
イ
ド