本

『戦争と平和 子どもと読みたい絵本ガイド』

ホンとの本

『戦争と平和 子どもと読みたい絵本ガイド』
草谷桂子
子どもの未来社
\1500+
2023.6.

 「戦争」の対義語は「平和」なのだろうか。逆に「平和」の対義語は、と問うとき、「戦争」しかないのだろうか。そもそも「対義語」という概念が曖昧である。何かをペアにしようとするとき、人間はシチュエーションの違いにより、様々な対義語を想定しているはずだ。「高い」の反対は、「低い」もあれば「安い」もある。「赤」の反対は様々だろう。白でも黒でも蒼でも緑でもありえるだろう。
 その意味で、「戦争と平和」が必ずセットにならねばならないという決まりはない。だが本当は、これらがただの対義語関係ではないことを踏まえておくべきなのだ。つまり、ここには「戦争」という事態が先行するのだ。なにげなく二つの概念が対立しているのではなくて、問題の発端は必ず「戦争」なのである。「戦争」が現にある。これを止めねばならぬ。あるいは、それを起こしてはならない、でもいい。「戦争」にならないようにしなければならぬ。目指すものはといえば……それが「平和」なのである。「戦争」サイドから見ての目標が「平和」となるのであって、「平和」があるときにその反対が「戦争」だ、と思いつくのではない。
 さて、それだから本書も、「戦争」という前提があって、そこから考える、あるいは感じる、という方向性から捉えておくべきであるだろう。
 サブタイトルは、「子どもと読みたい絵本ガイド」である。本書は、初めから終わりまで、絵本の紹介である。その数は「さくいん」から見る限り、殆ど200冊くらいある。どれも「絵本」である。こんなにも、戦争に関する絵本があるのかと驚いた。そして思い知らされたのは、自分が絵本というものをまるで知らない、ということだ。
 この中で知っている絵本は、というと、片手で数えるほどしかないのである。あるいは、「戦争」に関する絵本に無関心であった、ということをそれは意味するのかもしれない。
 本書の構成からすると、最初は小学生、とくに低学年でも対応できるタイプが集められている。このような集め方は、とても親切だ。
 続いて、次第に年齢層を上げていくような並べ方となっている。但しそのとき、テーマのようなものがいくらか揃えられていて、「いったい戦争とは何か、そして何故起こるのか」という問いかけのものから始まり、次は実際にこの百年ほどの間に起こった戦争を直接取り扱うものが集められている。
 第4章には「戦争が起こると……」というタイトルが付いており、そこには「故郷を喪う」ことと、「大切なものを守る」心とに分けられて本が紹介されてゆく。起こってしまうと、止められない、ということを鋭く指摘する絵本もあった。こうなると、大人相手としか思えない質になってくるが、だが子どもが手に取れるようにもちゃんとできているのが、絵本のよいところだ。子どももその問題を共有できる。子どもなりに考えることができる機会が与えられる。否、子どもの心に深く刻まれ、子どもの思い描く解決や希望が現れるかもしれない。その絵本に触れたことで、将来平和を生み出す仕事をするという人がいるかもしれないのである。
 第5章では「戦いが終わっても」となっている。戦争が終結しのはよいことだが、そこから始まる問題も当然ある。ファンタジーでめでたしとせず、現実にそこから始まる問題を、リアルに見つめる眼差しは、やはり大人向きかもしれないが、子どももそれを考えて悪かろうはずがない。
 第6章は「戦争をやめる・戦争を起こさせない」という題である。これは現実に力をもたらす可能性を模索するために、実のところ非常に大切である。戦争があるとこうだった、との思い出で終わるのではなく、現実の戦争を解決すること、また現実の中に戦争を生まないため、という一番大切なことを考える糸口となるだろう。
 そして最終章は、「希望につなぐ」という言葉でまとめられている。これが、「平和」というテーマになるのだろうと思う。そこには『いのる』という絵本がある。本書の中で私の知る数少ない絵本のひとつである。これは「絵」ではなく「写真」である。著者はその紹介の中で、自身の考えを述べている。「今、必要とされているのは、「希望」を感じることのできる文学や芸術ではないか……と最近よく思います」というのは、『いのる』の中に直接あるのかどうか、書き方が曖昧なのだが、著者がこれに大いに共感を示していることは確かである。
 戦争は破壊する。人が長い時間と知恵を要してつくりあげてきたものを、一瞬にして破壊し、無にしてしまう。誰もが愚かだと思うはずだ。だが、それなのに、その破壊を「しなければならないのだ」などと大義名分を掲げて、戦争をしようとする者がいる。人々もそれに従い、その思想を自分の中に取り込み、正義とする。そうしてひとは、自分を正義としたがる。
 先にも触れたが、本書には「さくいん」がある。それだけでも、心を尽くした制作姿勢が伝わってくる。これから私は、図書館で、これらの中から、少しずつ見つけて、読んでいこうかと思う。これらの絵本が描く世界を、敢えて潰そうとするような大人の欲望に、歯止めをかける力を、きっとこれらの本は有っていると思う。発行社の名が「子どもの未来社」であるというのも、実に切実で、ぴったりしたものであるかと、感動している。




Takapan
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