本

『朝日新聞の秘蔵写真が語る 戦争』

ホンとの本

『朝日新聞の秘蔵写真が語る 戦争』
朝日新聞社「写真が語る戦争」取材班
朝日新聞出版
\1890
2009.4

 月に一度、朝日新聞に特集され連載された記事をまとめた本である。大阪本社から見出された大量の写真を基に、記事がつくられ、この本にまでまとめられていった。
 これまで挙がってこなかった資料であるから、それだけの価値があると言えるだろう。戦争の体験者が、次々と世を去っていく。その証言も、生ではなくなっていく。新たな観点から尋ねてみようにも、人がいなかったり、記憶が薄れたりもする。なんとか伝えていこうと考える熱意ある人も、直接の体験をもたないということになる。取材班のメンバーも最後に紹介してあるが、まさにそうした世代である。
 だが、一つの写真をきっかけに、問いかけることはできる。それをこれからの世界のために活かしていくことはできる。そうした信念が感じられる。
 それは、過去をたんに暴くことでもないし、まして、自虐を喜ぶようなことではない。この道を絶対に再び辿らないようにしたいという思いから、この過去の歴史の捜索は、未来の探求であるわけだ。
 分厚い資料集、写真集である。それでいて、この価格は安すぎる。あまりにも安い。
 それだけに、多くの人が手にとって、そこから考えていきたいものだと感じる。その一人が、この私である。
 たとえ、この新聞社の分析そのものが気に入らない人であっても、写真そのものを否定することはないだろう。まさか、すべてが捏造であるとまでは、言わないだろう。
 ここから学ぶことは、きっとできるはずである。




Takapan
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