本

『プロ直伝 笑いの技術』

ホンとの本

『プロ直伝 笑いの技術』
浅井企画 放送作家セミナー
講談社
\1260
2006.11

 これは楽しみだ、と選んでみたものの、正直、期待していたこととは違った印象がある。
 ビジネスマンに役立つ知恵というコンセプトであった。だが、本を外から見るかぎり、その辺りが全く分からない。これ、ビジネスに応用しよう、というふうなコピーが、表紙に入っていただけで、もっと売れるのではないかと思われる。損ではないか。今のままでは、芸人を目指す若者だけが初めて本を手に取るにとどまるのではないだろうか。
 と、マーケティングみたいな話に終始するのはやめておこう。
 笑いと言えば、私は人生の半分を関西人と過ごしており、関西の笑いというイメージしかなかった。この本の表紙のイラストは、ちょっと関西っぽい。そういう期待もあった。だが、中身には関西の「か」の字もなかった(ないことはない)。すべて、東京の笑いであった。その寂しさも、どこかにあったのではないかと思う。
 萩本欽一氏の流れを汲む笑いである。そこには、浅草の風が吹き、どこか人間の優しさや切なさのようなものをくすぐるような味がある。人のことを悪く言わない、などという笑いの原則も掲げてあるが、昨今、それはギトギトに破られている。私も、そうしたものは笑えない。
 しかし、何気ないトーク番組や、いわゆるバラエティ番組にしても、あれくらいは自分でもできそうだ、などという思いだけは、絶対に抱かない。あれは、やはり芸である。笑いを集めることができるメンバーは、やはり芸をもっているのであるし、日頃はおそらくしかめっ面で、ネタを探しているのではないかと想像する。その点、過激なことを口にしたということで人気者になった女性が、笑いの芸を知っているみたいな勘違いをしてはならないと思っている。たしかに、「自己発露」をしているという点は、否定できないが……。
 この本には、実例や、練習問題があり、実際のお笑い教室の中から飛び出してきたような本であるという楽しさが、いろいろ盛り込まれている。たとえていえば、○○の日本史実況中継、みたいな、予備校講義を文字にした参考書のような感じだ。楽しめるのは、楽しめる。また、「場の空気を読む」という、最近これを見事に外している会話が多く聞かれる中で、学ぶところが少なくない人はいることだろうと思う。
 多分に、政治家の方々は、これで勉強なさるとよいかもしれない。小泉前首相は、その才があったかもしれないけれども。




Takapan
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