本

『若者の法則』

ホンとの本

『若者の法則』
香山リカ
岩波新書781
\735
2002.4

 若者と自らを呼びづらくなってきた世代の、著名な精神科医が、軽快に若者文化を、いや、若者の精神構造を語る。
 若者のことは理解しづらい、という大人には、たいへんな朗報ではないかと思う。ここには、大人が常識としていることとは別個の原理や原則が、あけすけに紹介されているからだ。
 それは、善悪を決するためになされているのではない。だから若者が悪いとも、良いとも書かれていない。互いに理解する、少なくとも近づき合うために、どういう点に触れればよいのか、そんな方策がぎっしりである。
 私も漠然と、若い人々はこういうふうなのではないだろうか、と考えることがある。当て推量でありつつも、その件について、さも真実を言い当てたかの口調で、偉そうに書いていることがある。その意味では、この著者と視点は重なる。ただ、私は直感的に過ぎないのであって、著者は、若者とふれあい、あるいは精神科医としての経験から、思いつきではない重みをもって叙述してくる。
 彼らが生まれ育った時代や社会状況を考慮に入れると、見えることがある。いったい、生まれ落ちたところの色に染まるというのは仕方のないことで、誰しもそこがスタートラインとなる。その環境の中で、育まれた精神構造というものを、そう簡単に捨て去ったり変更したりできるものではない。
 ポイントとなるテーマをアイテムにして、わずか数頁の中で一つの回答を与えていく。そのどれもが、具体的な経験や出会いをもとに記されているので、リアリティをもつものばかりである。
 高校入試対策の国語の文章として、この本の中の一部がよく取り上げられる。その意味からしても、読んで損はない本ではないかと思う。いや、読まなければ損をしそうな、世代間の地図となるであろう。
 もとより、この本の指摘がすべて完全に正しい、と推薦しているのではない。それは私には分からない。ただ、私の身近な経験からしても、あるいは私のそれなりの観察からしても、この本の指摘は、かなり信憑性があるのではないか、と私自身は勝手に決めている。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります