本

『わが子に読み聞かせたい日本国憲法』

ホンとの本

『わが子に読み聞かせたい日本国憲法』
水田嘉美
三修社
\1,200
2003.8

 読み聞かせたい云々という本が流行っているのは、国語力の崩壊の危機を感じた国語の教師が、かねてから教室で実践している、暗唱などを世に理解してもらい、広めていこうという意図が、世間にも受け入れられている証拠である。その路線で目にとまりたいという意味でのみ、このタイトルが付けられたのなら、私も最後まで読むことはなかった。
 この本は違う。日本国憲法とは、こんな意味だったのだ、と教えてくれる。
 塾で小学生たちにものを教えるとは、こうでなければならない。語彙からして慎重に選び、さまざまな言い回しを用いて、そのうえ、しっかりと理屈の通った説明でなければならない。教会学校だと、魂の問題であるからまた弱冠違うであろうが、やはり説明をするとなると難しいものを感じている方も少なくないと思われる。
 難しそうに説明するのは簡単なことで、誰もが分かるように簡単に説明することこそ難しいのである、という意味の言葉がある。
 この本は、塾で人気のある教師が、日本国憲法を完全に解説しているかのような爽快さがある。それでいて、人気取りのためでなく、ほんとうに憲法のことを子どもたちに知ってもらいたいという情熱から、それがなされている。
「わたしたち一般の国民と天皇家の人々とが、財産をやり取りするには、国会の決定が必要です。国会が「OK!」と言わないと、財産のやり取りができないのです。腹黒い人間が天皇家に近づき、悪いことをしないように注意するためです。」(第8条・皇室に財産を譲り渡し、または皇室が、財産を譲り受け、もしくは賜与することは、国会の議決に基づかなければならない。)
 ほかにも、さまざまな例を挙げ、小学上級生ならば十分理解可能な仕方で、憲法の全文が説明されていく様は壮観である。少し、アニメのキャラクターなどを出し過ぎて子どもに媚びているかもしれない、と思われる部分もあるが、概して取り上げられた例も相応しい。
 わが子だけに話すのはもったいない。いや、むしろ大人こそ、改めて憲法とは何かを知り、考えなければならない。憲法は改正すべきだとか、すべきでないとか、そんな議論に熱を入れる人々の中には、憲法の全文を味わったことのない人も少なくないのではないか。恥ずかしながら、私もまた、この本で初めて知った憲法の条文がある。「なんだ、そういう意味だったのか」と、膝を叩いたものがある。
 関西で使う、「ぶっちゃけた話」というのが、一番伝わりやすいものだ。憲法についての、ぶっちゃけた話が、ここにあるといえよう。




Takapan
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