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『ボランティアをやりたい!』

ホンとの本

『ボランティアをやりたい!』
さだまさし・風に立つライオン基金編
岩波ジュニア新書910
\820+
2019.12.

 高校生ボランティア・アワードに集まれ、という誘い文句と、各高校の活動の様子のピンナップをたくさん並べた表紙がうれしい。
 風に立つライオン基金主催の「高校生ボランティア・アワード2019」に参加した高校生たちのボランティアを紹介する本である。
 さだまさしが1987年に発表した楽曲「風に立つライオン」は、日本人医師・柴田紘一郎さんをモデルにした歌だったが、2015年に劇場用映画として新たなドラマに仕立てられた。私も見た。印象に残る映画であった。
 この高校生のためのプロジェクトは2016年に創設されたという。そしてさだまさし自身がまえがきでこの背景を紹介しているが、私のようなものが要約するのもおこがましく、これは皆さまが各自味わって戴きたいと願う。
 そしてどんな高校生たちが紹介されているか、それは参加したすべての高校というわけにはゆかないのだが、それでも一高校が写真を含めて4頁ずつ配置されて一冊となっているから、ここに紹介されただけでもかなりの高校の数である。ボランティアといっても一様でなく、自然保護から子ども食堂、介護に迫るようなもの、農産物の開発、ウィッグ、翻訳事業、海外への支援、それはもう私たちの想像力が及ぶことのできないほどの多種多様な営みがここに並べられている。それらを見ると、ボランティアというのはなんだってできるんだという勇気が湧いてくる。よく報道されるような、あれをしなきゃボランティアではないのか、というような思い込みから自由にされるのだ。
 ろう者と聴者の架け橋になるというものなどは私の最も願うところの一つだ。人を笑顔にすることだけでもいいし、海洋ごみへの挑戦に、伝統芸能の継承だってボランティアの範疇にちゃんと入る。なんだか元気が出て来る。
 応援するタレントや著名人などのエールもコラム的に載せられていて充実している。一つひとつの声が、真っ直ぐな高校生の気持ちに負けないように、大人の中にもきっとある素直な心を表してくれている。それは私たちの代弁でもあるだろう。
 私は高校生のとき、奉仕活動の部にいた。自閉症の幼児と毎週触れあうことは長くやっていた。全く相手にしてもらえないのだが、それでも一緒にそこにいることで、何らかのコミュニケーションができてくる。そこから自分を見つめさせてもらったような気もする。献血活動はよくやったし、天神の須崎講演の献血センターのところにもよく通った。自分では何も大したことはしていないとしか思えなかったが、高校卒業のときに、何かしら表彰しようかというような誘いがあったのは事実だ。
 そこで思うに、高校生って、いいものだ。中学生だと、活動に自由がなかなかない。大学生だと、もう大人企画になってしまうし、経済的な問題も関わってくる。高校生だと、部の活動だとある程度予算は確保されるし、利益などに無縁の精神で、高校生たちの真っ直ぐな思いが、機会さえあれば実現されようとむずむずしている息吹を感じるものである。もちろんある程度思い切った行動ができる自由も、中学生よりずっとある。自我の成長の度合いからしても、高校生くらいがちょうど面白いはずだ。身の回りという視野が、広く社会性を帯びてくるからだ。
 思えば、マンガやアニメを思い出してみよう。主人公が高校生たちであるものが、抜群に多いはずだ。殆ど舞台は高校だと言えないだろうか。高校生のもつエネルギーと自由さが、時にはちゃめちゃで喜ばせる環境としてぴったりなのだ。
 それを現実では、ボランティアという、これまたかなり自由の度合いの強い営みで力を発揮しようということになると、本当にいろいろなアイディアが出てくるものだし、この本に紹介されたのはまさにそのアイディアと実行力の集まりによるレポートであるということができるだろう。
 そして、大人も、元気が出る。間違いない。ボランティアの生き生きした姿は、ひとを生かすのだ。




Takapan
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