本

『プロに学ぶヴォイス・コントロール』

ホンとの本

『プロに学ぶヴォイス・コントロール』
吉田顕
自由現代社
\1260
1998.5

 だいぶ前の本であることをお断りしておく。
 聖歌隊で思うように歌えず、それも、そもそも声の出し方の基礎訓練ができていないため、そして音程すら怪しいという中で、当然の帰結であると分かっているゆえ、半ば諦め気分で毎回歌っている私である。
 今更ヴォイス・コントロールでうまくいくなどと虫のいい話も、嘘っぽい。
 どうせまた、「アアアアアアア〜」の声の出し方が、抽象的に書かれている本なんだろう、という気持ちで、ぱらぱらとめくってみた。
 違う。
 この本は、何だ、という感じだ。発声のハの字も最初は出てこない。好きなCDを何度も聴こうとか、顔にはどうして目があるか意識しようとか、重い本を持ち上げようとか、およそ発声する実践とはほど遠いことが書かれてある頁が延々と続いていく。パントマイムの勧めがあって後、ようやく息を吹き出すことにたどり着く。しかし、そこでもやることは、蝋燭を消すことだけである。
 やっと本の半分のところで、声を出す許可が出る。しかし、そこでも、口を大きく開けてはいけない、などと、挑戦的なことが書かれていく。英語のアナウンサー気分になるのがベスト、みたいなふうにも。
 もう、これはやみつきになりそうなほど、面白い本である。
 クラシックのため、というよりも、ポップスの発声が筋であるようだが、クラシックに使えないわけではないともいう。今風のヴォーカリストを基本的に三つの発声タイプに分析してしまっている終わりの項目も、注目したい部分である。それくらい、この著者は、あらゆる人の声を丁寧に聞き分けているのだ。
 図書館で見た本なのだが、自分でも欲しくなった。




Takapan
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