本

『細菌・ウイルス・カビ・寄生虫 驚異の正体』

ホンとの本

『細菌・ウイルス・カビ・寄生虫 驚異の正体』
岡部信彦監修
山崎智嘉著
汐文社
\1890
2005.3

 図書館用のようなハードカバー。薄手の本に「こわい! ウイルス・感染症」と題してある。表紙もどこか幾何学的なわりにはウイルスのイメージが強烈である。なかなか手を伸ばしやすそうな本になっている。
 見開き1項目で、左頁には基本的にマンガ、右頁はイラストを交えた解説が描かれている。ふりがなもあり、ターゲットは小学生であることがはっきりしている。
 なんだ、子ども向けの啓蒙書か、と言ってしまえばそれまでなのだが、これが実によく分かる。分かりやすくて、どんどん頭に入ってくる。
 常々、子ども向けの本は面白いと思っている。一つの理由は、分かりやすいからだ。何事も、分からなければつまらないが、分かれば面白い。それに、短い中に実に効率的に、伝えたい情報がこめられている。長々とした説明で読者を退屈させない配慮が行き届いているのだ。
 そもそも、子どもに分かるように説明することは難しい。難しい言葉を使って書くことは、実はそう難しくない。平易な言葉ですべての人に伝えようとして書くことに困難が伴うものである。この本は、子どもには難しい知識が多く含まれているには違いないが、伝えたいことはきちんと伝わるようにできている。
 さて、内容についてだが、基本的には個々人で開いてお読み戴きたい。さほど時間が過買わず全貌できる。具体的には、ウイルスの定義からその性質、食中毒のメカニズム、保健衛生のシステム、最後には地球温暖化にまで言及されているが、それは、温暖化現象が感染症の蔓延をもたらすことに気づくためである。この指摘はふだんさほど注目されないだけに、意義がある。
 これは第2巻だというから、シリーズがあるのだろう。こうした良書の中には、図書館にしか並ばない性質の本もあり、私たちが図書館へ行く意味もそこにあるということになる。物事の基本を抑えるためには、恰好の本となるだろう。




Takapan
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