本

『ウイルス&インターネットトラブル 体験・解決マニュアル』

ホンとの本

『ウイルス&インターネットトラブル 体験・解決マニュアル』
ライターズ・ギルド・ねずみ書房
新紀元社
\2,200
2003.9

 紹介しにくい本である。こういうのは、時期的に旬であるという性質があり、時が経てばたちまち内容が古くなってしまう。いずれ近い将来削除しなければならない紹介文になるのだろうが、それでも、こうした知識の必要性と、この本が実に優れているという点は、宣伝しなければなるまいと考えたのである。
 やたら絵やイラストのイメージで、分かったふりをしてもらおうとするのではない。ひたすら文章中心である。ときおり、ディスプレイ画面に出てくるウィンドウや、パソコンの部品の画像があるが、説明は懇切丁寧かつコンパクトにまとめられた説明である。  そのうえ、そうとう専門的な分野のことも記されており、なおかつ素人にも何をすればよいのか、どう考えればよいのかが明らかにされている。たしかに、ある程度のコンピュータ用語は必要とされる。だが、セキュリティにまつわるあらゆる一般知識が網羅されているので、何か事態が起こった場合にどうすればよいかが明らかである以上に、それを起こさないような対策は何か、をまず教えてくれる。
 雑誌に特集されているセキュリティの設定や知識もよろしいだろう。その都度ホットな話題が提供されているし、かなり親切であるのも事実である。だが、系統的でページ的なまとまりに制限されることのない記述は、実に頼りになる。
 ときおり、操作がフローチャートで説明されるのも、案外初心者に分かりやすいだろうし、何より問題点がどこにあるかの把握については、こうした図式がはっきりさせてくれる。たぶん上級者にも親切なガイドとなっていることだろう。いや、こうした本は、多少説明の詳しすぎる点はともかくとして、ネットをさまよう素人たちこそ、学ばなければならない注意に過ぎない。
 たとえて言うなら、運転免許は自動車学校における一定の学習と経験とでマスターできるにしても、安全に運転するための知恵となると、そういう場では十分に身につけることができないであろう。私は中島悟さんの本で、停車するときに前の車との間に車1台分のスペースを置いて一度停まっておき、バックミラーで後方の確認を怠らないことが、後方からの追突を避ける方法だと知って、それを実践している。これと同じように、ネットを歩くというとき、事故を未然に防ぐ知恵というものは、素人や初心者には体得不可能である。背伸びしてでも、本やそうした注意を与えてくれるサイトで学ばなければならないのである。
 検索ロボットが、メールアドレスを自動的に収集して、そこ宛てにスパムメールを送りつけるという構図も、この本を読んでよく分かった。それへの対策として、どういうことが有効で、どういうことはやっても意味がないか、などのことも、この本には詳しく説明されている。
 被害を受けたときにどういう動きをしたらよいか、にも触れている。チェーンメールを受け取った際の対処はもとより、自分がそれを発信してしまった場合に、どういう連絡方法をとればよいか、まで至れり尽くせりである。どうすればいいと思うだろうか? 断りのメールを送ったら、それがまたチェーンとなってしまう可能性がある。正解は、無視しておくか、あるいは電話によって知らせるか、だそうである。実際的な対処の仕方についても事細かく情報を与えてくれる、こんな親切な本が、もっと広まればよいのに、と思う。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります